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銀幕の精神#7 映画 『ポンティアナックの復讐』

伝統的なマレーシアの幽霊とフェミニズム

Dendam Pontianak
『ポンティアナックの復讐』


『デンダム・ポンティアナック』は、シンガポール人のグレン・ゴーイ監督とマレーシア人のギャビン・ヤップ監督による長編ホラー映画です。出産の途中で命を落とし、正しく葬ってもらえなかった女性が吸血の幽霊「ポンティアナック」になるという古い民話を題材にしています。

子役に演技指導するギャビン・ヤップ監督

 舞台は1965年、建国直後、都会の近代性とはかけ離れた小さな村。結婚式を迎えた新郎カリド(Remy Ishak)と新婦シティ(Shenty Feliziana)。結婚式に旧友が現れたところから物語は始まります。ところが、村で超自然的な現象が起こり、村人が殺戮され、彼らの幸せは奪われます。カリドには隠された過去があったのです。

 さかのぼること数年前、自由気ままな生活を謳歌し、カリドと関係を持った都会の娘ミナは、未婚のまま身ごもります。困ったカリドと友人らは、子供を産み落としたミナを殺めてしまうのです。悲惨な死によってポンティアナックとなったミナは、復讐を企てます。復讐に成功したミナ。しかしこの世にはもはや自分の居場所はない、と悟るのです。

 劇中、ポンティアナックの脅威を村から拭い去ろうとするシャーマン(ボモ)(Nam Ron)は、ポンティアナックを倒すには、彼女の首筋にくぎを打ち込むしか方法はないといいます。じつは近年、ポンティアナックをフェミニズムの象徴としてとらえる動きがあり、首にくぎを打ち込むという行為は、家父長制の中で自由を求める女性を黙らせる象徴ともいわれています。その話は、またいつか詳しくお話ししましょう。


『ポンティアナックの復讐』(日本語字幕付き)はNetflixで配信中。
国民的歌手シティ・ヌーハリザさんがテーマソング「Kekasihku Selamanya(永遠に我が恋人)」を歌っています。

撮影現場の様子

文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan  翻訳/上原亜季 Aki Uehara

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