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私はボルネオ出身で、外国にいると、故郷の熱帯雨林が恋しくなることがある。自分の頭の二倍くらいある大きな葉、高い木の幹に咲くランの花、地面を覆う苔の緑。生命力のみなぎる多様な木々の枝や葉にはばまれ、鳥たちの写真を撮ることはとても難しいのだが、オーケストラのように虫や動物の声が鳴り響いているなかで、なぜか穏やかに感じられる熱帯雨林で過ごす時間は、何物にもかえがたい。
ボルネオの熱帯雨林では、6種のキヌバネドリが見られる。山道を歩いていると、小さくやわらかい「ピュウ、ピュウ、ピュウ」という声を聞いた。振り返ると、枝から枝に飛び移ったアカエリキヌバネドリのオスの姿が目に入った。緑の海に宝石を見つけたような気持ちでシャッターを切った。
キヌバネドリと違い、ボルネオタンビヘキサンは、カラスのような大きな声で鳴き交わしながら、木々の間を群れで移動している。中の一羽が突然私の前の木に止まり、こちらをじっと見た。こんなふうに、そこかしこで私も見られているのかもしれない。
これらの鳥たちに出会うには、キナバル山やレインフォレスト・ディスカバリーセンターなどを訪ねていただきたい。そして、今、このような熱帯雨林がどんどん失われていることも、ぜひ知っておいていただきたい。
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