「はじめて食べたとき、わっ、おいしい! と感動したんです」。そう話してくれたのは、ハリナシバチ(針をもたない蜂)のハチミツを日本で販売する上林洋平さん。熱帯雨林に生息するハリナシバチとの運命の出会いから、おいしくてバラエティに富んだ味の秘密にも迫ります!

時間を忘れて、森の生き物を観察した日々
大学時代のゼミの活動で、約1カ月間、タイの熱帯雨林でイチジクの木をただひたすら観察し続けた上林さん。
「観察していると、テナガザルやサイチョウなど、いろいろな生き物がやってくるんです。見ているだけなのに飽きることがなくて、そうか、自分は森の生き物を観察するのが好きなんだな、と気づきました」
卒業後、自然をテーマにしたテレビ番組の制作ディレクターとして活躍。ジャングルをもっと近くに感じたい、とボルネオ島の旅行会社に転職し、ジャングルのトレッキングや国立公園ツアーのコーディネーターとして活動。愛らしいテングザルや希少な昆虫などを間近でみる日々。


そんな上林さんに転機が訪れたのは、日本に帰国して数年後。SNSで偶然目にした「ハリナシバチの養蜂」という文字。それまでもジャングルで飛び交う姿をよく見ていたハリナシバチ。このハチが養蜂できることって本当? さっそく飛行機を3便乗り継ぎ、マレーシア・サラワク州にある小さな田舎町のサリケイの養蜂所に訪問。これが、すべての始まりでした。
このハチミツは森を守ることができる
快く迎えてくれた養蜂所で、さっそくハリナシバチのハチミツを試食。
「さわやかな酸味、さらっとした食感。一般的な蜜蜂のハチミツとはまったく違うおいしさに驚きました。また、巣が独特で、ゴムのような弾力のある小さなツボ状のもの(ハニーポットと呼ぶ)が並んでおり、これがすべて木の樹液で作られ高いるんです。木の樹液は高い抗酸化作用のあるプロポリスを含むので、そこで作られたハチミツの栄養価も高くなります」



「ハリナシバチの巣には、木の樹液が必要です。言い換えれば、ハリナシバチを養蜂するためには森の木々を守らなければいけない、ということ。この事業が成功すれば、ジャングルを守ることにつながるかもしれない。このことに大きな意味を感じました」
ジャングルの生き物が大好きな上林さんは、さまざまな場面で目にする森林破壊に胸を痛めていたそう。そんなときに出会ったハリナシバチの養蜂は、自然と人間活動のどちらもが守られる、ひとつの解決策になる、とひらめきます。
そして2017年、ハリナシバチのハチミツの輸入をスタート。2019年に、自社ブランド「蜜林堂」を立ち上げました。
ハチミツの味で多様性を表現したい
さて、読者のみなさんはハリナシバチの種類が約600種もあることをご存じですか? 蜜蜂は9種で、比べると、ハリナシバチの多様性は驚くほどです。
「ハリナシバチのハチミツの味は、種類、生息地、採取の時期、花の咲き具合、さらに巣の年齢によっても変わります。たとえば、ベリーのような酸味を感じたり、コクのある甘さになったり。さらっとしているのが基本ですが、中にはとろみがあるものの。この予測できない味が自然そのものなのです」

採取方法は、ひとつひとつ手作業で行う
もうひとつ、ハリナシバチの養蜂の特徴は、採取方法。ツボ状の巣はハニーポッドとよばれる、直径約2センチ程度。その小さなハニーポッドから採れる量はごくわずかで、ひとつひとつ手作業で採取するのです。

健康を届けたい人へのプレゼントに
木の樹液から作り出されるハリナシバチのハチミツは、抗酸化力が抜群に高いことでも知られています。先日、公表されたデータによると、マヌカハニーの抗酸化力、ジャラハニーの抗酸化力、その両方を保持していることがわかり、健康への効能は期待される、とのこと。


じつは何を隠そう、記事を書いている私も、上林さんからハチミツを購入しているリピーター。私の場合、健康補助サプリのような位置づけで、小さじ1杯のハチミツをぱくっとそのまま飲んでいます。とくにノドが痛いとき、体調管理に気を付けたいときに摂取。また母も好きで、母の日の恒例のプレゼントにしています。

ハチミツをいただきながら、森の多様性を守るプロジェクト、これからも応援していきたい。
蜜林堂(みつりんどう)
〒651-0093 兵庫県神戸市中央区二宮町一丁目11-6-101
TEL:078-855-8396 / 050-7118-2650
※実店舗、オンライン販売あり