外国を訪れる際、現地の音楽に触れ、CDを購入するのは旅の楽しみの一つです。多民族国家であるマレーシアは音楽も様々。今回はマレー系の伝統音楽CDをご紹介します。なお、これらのCDは、今年、Hati Malaysiaで行ったクラウドファンディングの「特典」として特別にマレーシアから入手したものです。
Geng Wak Long
『The New Authentic Kelantanese Traditional Music of Malaysia』
芸能の宝庫とも言えるクランタン州の伝統芸能グループ「Geng Wak Long(ゲン・ワッロン)」によるクランタンの伝統音楽集。舞踊劇「マヨン」や影絵芝居「ワヤンクリ・クランタン(ワヤンクリ・シアム)」の曲から、男衆が集まってコール&レスポンスの形で歌う「ディキール・バラット」や、弦楽器ルバブを用いた語り部「タリセランピッ」のスタイルで歌っている曲など、クランタンの伝統芸能をアレンジして収録。クランタンの伝統芸能が生き続けていきますように、との想いもこめられた一作。
(ご購入についてはMutiara Arts Productionにお問い合わせください)
『Koleksi Lagu-Lagu Mak Yong』
ユネスコの無形文化遺産に登録されている舞踊劇「マヨン」の音楽集。マヨンは、マレー半島北東部クランタン州や東海岸のトレンガヌ州で伝統的に演じられてきました。舞踊、芝居、音楽など、様々な要素から成り立っているマヨンという芸能の中で、マレーの伝統楽器による音楽は重要な役割を担っています。演奏に加え、精神的な重要性も持つ弦楽器ルバブに敬意を表する「Mengadap Rebab」の曲や、登場人物の移動の曲、子守唄など、芝居のシーンにあわせた曲が演奏されることにより、それぞれのシーンに奥行きを持たせます。ペナン島の大学Universiti Sains Malaysia(USM)のアーティストらにより作成されたCDです。(非売品)
『Gamelan Warisan Melayu』
大小さまざまなサイズの青銅の銅鑼(ゴング)や鍵盤楽器、木琴、そして太鼓などの楽器から成るマレーのガムラン。19世紀初頭にリアウ・リンガ王家(現・インドネシア領)からマレー半島東海岸のパハン王家に伝わったガムランは、宮廷音楽として舞踊とともに「ガムラン・ムラユ」または「ジョゲッ・ガムラン」として発展しました。インドネシアのジャワガムランに比べると小編成のアンサンブルです。1950年代以降は、教育機関や文化施設で器楽曲を中心に演奏されるようになり、新しい曲も作曲されてきましたが、このCDには宮廷音楽として演奏されていた伝統曲がまとめられています。
(トレンガヌ州立博物館にて購入可)
[この記事はWAU No.14(2017年12月号)から転載しています。]