Ethnic groups, Culture, and Traditional performance of Sarawak
多くの民族が共存するサラワク州。大自然と密接に関わってきた伝統文化も芸能も、色褪せることなく受け継がれてきたサラワク州には、他州とは違った魅力が秘められています。
サラワク州の民族構成は、先住民族で「海ダヤク」とも呼ばれるイバン族の人口が最も多く約3割を占め、中国系、そしてマレー系と続きます。そのほか、「陸ダヤク」のビダユ族、いくつかの少数民族の総称であるオラン・ウル、おもに海岸地帯に住むメラナウ族、熱帯雨林で移動生活を送ってきた狩猟採集民プナン族※1など、多くの少数民族が暮らしています。使用言語も民族によって様々。イバン語が広く使われていますが、州全体では40以上の言語や方言に細分化されるといいます。
陸稲などの焼畑農業や狩猟採集、漁労を営んできたダヤク族の多くは、高床式の住居や川沿いに建てられたロングハウス(長屋)で生活をしてきました。かつては、首狩りの習慣があり、頭蓋骨は精霊が宿るとされ、魔除けの意味も込めて天井から吊るされていたのです。
長い歴史の中で、それぞれの民族が独特の文化を育んできました。民族衣装も様々で、サラワク特有のモチーフを織り込んだ衣装は力強さと華やかさを兼ね備えています。イバン族では、天然染料で染められた茜色をベースに動植物の文様を織り込んでいく機織り布「プア・クンブ」が有名。布自体にスピリットがこもり、伝統的には出産、結婚、葬儀、治癒などの儀式にも使われ、神聖で重要な意味も持っていました。
舞踊は、鳥が舞う様子や狩猟の様子、戦士の踊りを表現するなど、彼らの生活環境を反映した踊りが多く、ボルネオ島の大自然の豊かさも感じさせます。民族楽器も、弦楽器「サペ」や竹笛「スルリン」、竹筒琴「サトン」など、熱帯雨林の奥地で切り出された木や竹を素材に作られた楽器がたくさん。東南アジア諸地域で演奏されてきた大小のゴング(銅鑼)の合奏は、文化的、社会的にも重要な役割を持っていました。
サラワクには、マレーシアのどの州よりも自然に近い魅力あふれる文化が凝縮されています。 ※1 現在は、政府の定住化政策などによりほとんどが定住生活。
文・上原亜季 Aki Uehara 写真・NgeeJee、Hati Malaysia
[この記事はWAU No.16(2018年6月号)から転載しています。]