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マレー舞踊の世界 World of the Malay Dances[WAU No.30]

マレーシアには、マレー系、中国系、インド系と民族ごとにそれぞれの伝統舞踊があります。また、マレー半島の先住民族オランアスリ、ボルネオ島の先住民族や少数民族にも各々に独自の伝統舞踊が伝えられています。そのため「マレーシア」を表現するステージでは、舞踊団によって、これらそれぞれの民族舞踊が別演目で演じられることがほとんどです。今回は、マレー系の舞踊の世界に注目し、なかでも人気のある「ザピン」と「ジョゲッ」を紹介します。

宮廷舞踊から民衆の踊りまで
多様なマレー舞踊

 マレー系の舞踊は、様式化された宮廷舞踊、マレー半島北部州に伝わる物語性のある舞踊劇の中で演じられる舞踊、大衆芸能として一般の人々に楽しまれてきたソーシャルダンス(フォークダンス)の大きく3つに分けることができます。

舞踊劇 Makyong の舞踊シーン “Mengadap rebab” ©︎ Aki Uehara

宮廷舞踊には、17〜20世紀前半にかけてマレー半島のクランタン州の宮廷で演じられていた「Asyikアシッ」、19〜20世紀にかけてパハン州とトレンガヌ州の宮廷で青銅打楽器ガムランの音楽に合わせて舞われた「Joget Gamelan ジョゲッ・ガムラン」、ペルリス州、ケダ州、クランタン州などに伝わる「Terinai トゥリナイ」などがあります。
 舞踊、演技、音楽などさまざまな要素を含む舞踊劇には、クランタン州を中心に演じられてきた「Makyong マヨン」やケダ州の「Mek Mulung メッムロン」などが含まれます。マヨンは、宮廷で演じられた歴史があるものの、もともとはどちらも村の芸能で、人々の娯楽や儀礼を目的として演じられてきた大衆芸能です。

かつて村人たちに囲まれて演じられていた舞踊劇 Mek Mulung
©︎Aki Uehara

  そしてソーシャルダンスやフォークダンスと呼ばれる、民衆の踊りとしてのマレー舞踊は、歴史的に関係の深い中東、中国、インド、ポルトガルなどの影響を受けながら発展してきました。群舞であり、男女別、あるいは男女混合のグループで踊られます。踊りのステップ、動き、音楽などの違いにより「Zapin ザピン」「Joget ジョゲッ」「Inang イナン」「Asli アスリ」の4種類のジャンルに分けることができ、それぞれ地域別にも多様なスタイルが確立されています。

©ASK Dance Company
ザピンやジョゲッを踊る際、男性はバジュ・ムラユにイスラム帽「ソンコ」、女性はバジュ・クロンを衣装とする。
©ASK Dance Company

軽快なステップで魅せる
「ジョゲッ」と「ザピン」
Zapin & Joget, the Malay Folk Dances

Zapin 【ザピン】
アラブの舞踊と音楽から発展したザピン

 ザピンは、14〜15世紀頃、南アラビア(現在のイエメン共和国)のハドラマウトから渡ってきた、独自の文化を有する移民「ハドラミー」や貿易商によって伝えられた舞踊のスタイルをもとに、スマトラ、リアウ諸島、マレー半島南部のジョホール州などで発展してきました。
 イスラム教の宗教行事、結婚式や祝宴、公のイベントで踊られることが多い華やかな踊りで、もともとは、男性のみの舞踊でしたが、1970年代頃から女性が演じる演目や男女で踊る演目が増えました。
 州や地域ごとにステップや踊りの構成、動きなどに違いのある15以上の種類があり、ザピン・ムラユ、ザピン・アラブ、ザピン・ジョホール、ジョゲッ・ランバッのように、村や地域の名前を冠した踊りに細分化されます。
 特にザピンの人気が高いジョホール州では、小中等学校にザピンを習う舞踊のクラスがあったり、舞踊グループがあるため、多くの児童がザピンの基礎を身につけ、彼らのアイデンティティの一部となっています。毎年、州都ジョホールバルではザピン大会(小中等学校部門、大学部門など)が開催され、国際大会には、マレーシア全土、またインドネシア、ブルネイなど、周辺国からも参加者が集まります。

ザピンは、子供たちにも人気のスタイル。 ©Abdullah Deen

Joget 【ジョゲッ】
人々が一緒に踊れるソーシャルダンス

17〜18世紀頃、マレーの四行詩「パントゥン」を歌詞にした歌とバイオリン、アコーディオン、片面太鼓ルバナ、そして銅羅ゴングの演奏に合わせて踊る民衆芸能がマレー半島にありました。のちに「Ronggeng ロンゲン」とよばれるようになり、結婚式など人々が集まる際の娯楽として人気がありました。
 ジョゲッは、もともとマラッカのポルトガル系コミュニティで踊られていた「Branyo ブラニョ」というフォークダンスとマレーの踊りの要素が融合して生まれたスタイルで、ロンゲンの中でも主要な、男女ペアで踊るスタイルです。
 ジョゲッは、マレー舞踊の一つのスタイルであると同時に、マレー語で「踊ること」そのものを表す単語としても使われます。比較的簡単な踊りのスタイルなので、初心者でも踊りやすく、よくダンスショーのラストに披露され、「joget joget(踊ろう、踊ろう)」の掛け声とともに、一般の人々とプロのダンサーが一緒に踊るプログラムが組まれているなど、現在でも人気のあるスタイルです。

男女がペアになって踊るジョゲッ
男女がペアになって踊るジョゲッ

ソーシャルダンスのための音楽

 マレー舞踊は、メロディーやリズムが特徴的な楽器演奏と歌に合わせて踊られます。踊りのスタイルごとにリズムパターンがあり、それぞれのリズムに合わせて基本のステップやダンスのフォームが決まっています。
 ジョゲッを含むロンゲンの楽器編成は、アコーディオン、バイオリンなどの西洋楽器と、片面太鼓ルバナ、銅羅ゴングなどのマレー系の芸能によく使われる楽器を組み合わせた編成です。
 アラブ音楽の影響が強いザピンには、上記のほか、中東から伝わった弦楽器ウードをもとにした撥弦楽器ガンブスや小型両面太鼓マルワスが使われるのが大きな特徴です。

公の祝宴では生演奏が多く、参加者がジョゲッなどのマレー舞踊を一緒に踊る。 ©︎Aki Uehara

参考文献
・”The Encyclopedia of Malaysia: Performing Arts” (Archipelago Press)

マレーの伝統舞踊をオンラインで学ぶ
「Tradisi & Irama SENI TARI」

教材として、ザピンまたはジョゲッなど、スタイル別にマレー舞踊の基礎的な動きを短くまとめた動画が毎週提供され、いつでも、どこでも自分のペースで舞踊を学べる1カ月のオンライン学習コース。最終週には、現地の認定講師と1対1のオンラインレッスンがあり、試験の上、証明書が発行される。特典として、マレーシアでの舞踊公演の鑑賞券付き!
【受講方法】 ウェブサイトから登録、支払い後、Taj Tours Malaysiaからダンスパックを入手し、学習をスタートできます。1名から、いつでも受付可。
【使用言語】英語 
【料金】 13,900円 /コース
【主催】 Taj Tours Malaysia
【ウェブサイト】 https://www.tajtoursmalaysia.com/

「民族舞踊を通してマレーシアを体験。文化を愛することは、より深く知ることです。ご参加お待ちしてます。」
主催者:Datin Sri Rahayu bt Tajuddin, Managing Director Taj Tours Malaysia


取材・文/上原亜季 Aki Uehara
取材協力・写真提供/Taj Tours Malaysia
写真提供/Kamrul Hussin (Gambus, Marwas), ASK Dance Company, Aki Uehara 

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