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音で訪ねるマレーシア#6 ユネスコ無形文化遺産に登録「ドンダン・サヤン」 [WAU No.19]

2018年11月、愛の詩を男女で歌い合う芸能 「ドンダン・サヤン Dondang Sayang」が ユネスコの無形文化遺産に登録されました。

 ドンダン・サヤンは、15世紀頃、マレー半島南部の古都ムラカ(マラッカ)でポルトガル民謡などの影響を受けて発展し(*1)、王宮の娯楽として演じられたほか、マレー系、プラナカン(*2)、中国系、インド系、ポルトガル系など、主にマラッカやペナン島の多様な民族に愛されてきた芸能です。

ペナン島のドンダン・サヤン バス

 男女の歌い手がマレー語の四行詩「パントゥン(Pantun)」の形で詩を交わします。4つの文で構成されるパントゥンは、前半2行は自然などの情景描写、後半2行で恋心、感謝、風刺、忠告などの主題をよみます。短い散文詩の中で韻を踏む必要がある上、ユーモアを盛り込むなど、即興で歌う歌い手には高い能力が求められます。伴奏の楽器構成は、バイオリン、マレーの片面太鼓「ルバナ」2台、ゴング(銅鑼)。アコーディオンが加わることもあります。歌と歌の間に演奏されるバイオリンの「合いの手」も即興でメロディを踊らせ、その掛け合いもまた美しいのです。

バスの車内での演奏

 ペナン島では、1954年に「ドンダン・サヤン・クラブ」が創設され、中国正月の15日目、チャイニーズのバレンタインともいわれる「Chap Goh Meh チャップ・ゴーメー」の日には、電飾で飾られたドンダン・サヤン・バスが賑々しくペナン島ジョージタウンを走るようになりました。中には、色とりどりの民族衣装クバヤに身を包んだプラナカンの女性たちが乗り、中継地点で待ち受けていた男性たちと踊る様子は、なんとも華やか。バス車内では、楽団がドンダン・サヤンやマレー民謡などを演奏します。

バスでやってきた、クバヤに身を包むプラナカンの女性たち

 西洋音楽の影響を受け、詩をマレー語で歌い、プラナカン、中国系の祭事でも大切な役割を担うドンダン・サヤンは、とてもマレーシアらしい芸能です。ネット時代の今は恋愛模様も様々。日本の俳句のように、時代を表す愛の詩をパントゥンで歌い合う若い歌手がいると面白いな、と想像をめぐらせています。


(*1)ドンダン・サヤンは、インドネシアのリアウから発展したという説など、起源には諸説あります。(*2)15世紀後半頃からマレーシアにやってきた主に中国系の移民で現地の女性と結婚し独自の文化を開花させた人々の末裔

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