サラワクで味わって欲しいのは、ずばり麺。汁無しのシコシコ麺、肉たっぷりの漢方スープ麺、No.1ラクサとよばれるサラワク・ラクサまで。さらに、チキンライスや蟹の黒胡椒炒めなど、定番のマレーシアごはんも驚きのおいしさ! 州都クチンで生まれ育った地元っ子3人に、おすすめの料理を教えてもらいました。
1日目、ジーさんが連れていってくれたのは「コロミー」の専門店。コロミーとは、葱やにんにくで香りをつけた香味油と大豆調味料のあえ麺。スープはなく、コシのある卵麺そのものをあっさりダレで味わう料理で「テーブルに運ばれてきたら、よく混ぜる、すぐ食べる」のがポイント。つるっとした麺の食感と香ばしいチャーシューが絶妙なバランス! 余計なものは一切入っていない麺マニア必食の味です。
翌朝、今度はスンさんが「僕らのソウルフード」と連れていってくれたのは「ラクサ」の屋台。ラクサとは、地方ごとに味が異なる、いわばご当地ヌードル。なかでもサラワクのラクサは、世界80カ国を旅したアメリカ人のグルメレポーターが「神の朝ごはん」と絶賛したことで有名。カレー色のスープは30種類以上のハーブやスパイス入り。ところが意外にもスパイスの香りはひかえめで、さらに醤油に近い日本人好みの深いコク。ビーフン麺のさっぱりした味もいい感じで、この味がソウルフードなら、私もクチン人になれる!と思ったほど好みの味でした。 「お菓子はラピス・ケーキ」とハイディさん。数ミリ単位の厚さで重ね焼きした非常に手の込んだレイヤーケーキで、しっとりとした食感と味はバームクーヘンにそっくり。「お祝いのお菓子」でカラフルな見た目が特徴です。
シンプルな味のコロミーがあるかと思えば、スパイスを多種使ったラクサが愛されている。ひと言ではまとめられない多彩な味わい。これこそが、サラワクごはんの真髄。食いしん坊必訪の町です。
デザート、ドリンクもおいしい!
(左)小豆とココナッツミルク入りのかき氷、チェンドル。(中央)下から黒蜜、ミルク、紅茶が層になったスリーレイヤー紅茶。テー・シー・ピン・スペシャルともいう。(右)搾りたてのさとうきびジュースとココナッツウォーターを混ぜたドリンク。美味!
サラワクの名物料理
トマト・クイティオ Tomato Kway Teow
米粉の幅広麺に、特製トマトソースをかけたもの。あらかじめ、しょうゆ味のソースでコク深く炒めた麺とトマトソースのさわやかな酸味が絶妙なバランス。
※ Song Kheng Hai Hawker Centre
クエチャップ Kueh Chap
数種の漢方と豚肉で作るバクテーそっくりのスープ。麺はすいとんのような形で、つるつるもちもちの食感が特徴。スープとともに、レンゲですくって食べる。
※ 國文茶餐室
サラワク・ラクサ Laksa Sarawak
ふくよかなコクと辛みが広がるカレースープ麺。麺はビーフン、具は鶏、えび、細切りの卵焼きなど。食べる直前に柑橘類リマウをきゅっと絞る。
※ 春園茶室
ラピス・ケーキ Kek Lapis
一層ずつオーブンで焼くレイヤーケーキ。西マレーシアやインドネシアにも似たお菓子はあるが、このようにカラフルに仕上げるのはサラワクだけ。
※ Orchid Garden Coffee Houseのランチビュッフェより(ラピス・ケーキそのものはMira Cake Houseが有名)
バンブーチキン Ayam Pansoh
竹筒に鶏肉とタピオカの葉を入れ、蒸し焼きにした伝統料理。レモングラスの香りがさわやか。肉質はやわらかく、鶏のうま味が凝縮している。
※ Permai Rainforest Resort
ミディン Midin
サラワク名物の山菜ミディン。くるりと巻いた姿はゼンマイ似で、やわらかな食感、クセのない味が特徴。ブラチャンで炒めたり、ゆでて和えものにする。
※F
チキンライス Chicken Rice
鶏肉はしっとりやわらかで、ふっくら炊きあげたご飯は香り豊か。つけダレのチリソースは、酸味のあるものや発酵海老入りなど多彩。
※ SUUKEE
ロティ・キアップ Roti Kiap / Roti Kahwin
ココナッツミルクで作る甘いカヤジャムとバターをはさんだ薄焼きのカリカリトースト。朝食の定番。カヤトーストと同じもの。
※協益茶室
チャンコ・マニス Cangkok Manis
マレー半島側ではサユマニスとよばれる野菜で、サラワクでは卵と炒めて食べる。クセのない味で、写真は豚足と一緒に提供。
※ River Park Food Court
蟹の黒胡椒炒め Black Pepper Crab
淡白な蟹の味に合わせるのは、サラワク名産の胡椒のパンチの効いたソース。玉ねぎがたっぷり入っているので甘味もある。
※ Restaurant Masa-Ria Seafood
日馬文化比較コラム
こんなところに日本語?!
UMAI と うまい
海沿いに暮らす民族の代表料理「ウマイ」。地元で獲れる白身魚を生のまま柑橘系のしぼり汁でしめ、唐辛子で味つけしたもの。ある説では、むかし日本軍がこの料理を食べてうまい!と言ったのが名前の由来とあるが、地元の人に伺うと、日本軍侵攻前よりウマイという料理はあったのだそう。もち米で作る地酒トゥアと一緒に食べるのがポピュラー。
ここで食べられます!サラワク川沿いのホテル「Grand Margherita」のバー「RAJANG LOBBY LOUNGE」
早朝から大賑わい
屋台がいちばん繁盛するのは朝
サラワクの屋台は朝が早い。早朝4時に市場に買い出しにいき、6時前には店を開ける。7時ごろから続々と客が集まってきて、賑わいをみせる。売り切れ御免の営業スタイルなので、昼前に営業終了の屋台もごく普通にある。 一方、お客にとっての朝ごはんの重要度も日本とは違う。日本なら1日のエネルギー補給程度だが、サラワクの人は、朝ごはんの時間を大事なリラックスタイムとしてとらえている。味にこだわって屋台を選び、ときに仲間で集合して、会話を楽しむ。なんとも贅沢な1日の始まりなのだ。
クチンの美食を満喫するごはんツアーを開催!10月5日 ( 金) 夜発~10月10日( 水) 朝着の3泊6日。サラワク・ ラクサの料理教室、ビダユ族の自宅ご飯、地元のマレー シア人との交流など、このツアーだけの企画が満載です。詳細は「マレーシアごはんの会」Web ページまで
文・古川音 Oto Furukawa 写真・NgeeJee、Hati Malaysia
[この記事はWAU No.16(2018年6月号)から転載しています。]