注目の店

花や生魚を使ったボルネオの民族料理

野菜の塩漬け、柑橘でマリネした生魚、花の炒めもの。いわゆるナシレマッなどの定番のマレーシア料理とはまったく異なる味を提供するレストラン「My Native Sabah マイ・ネイティブ・サバ」。ボルネオ島北部の町コタキナバルにあり、地元の人から国内外の観光客まで注目を集めています。


先住民族カダザン・ドゥスン族の伝統料理

食材は野菜と魚介類が中心。常夏の気候下でも食べやすい酸味と辛味の効いたものが多い

ボルネオ島サバ州の州都、コタキナバル。レストランが集まるショップロットPlaza333の1F(日本では2F)に「My Native Sabah マイ・ネイティブ・サバ」はあります。

言語や風習文化などの基準で、30以上のエスニックグループが認定されているサバ州。最大の民族がカダザン・ドゥスン族で、もともと内陸の森で暮らしていた人々。店主サンドラさんも、そのひとりです。

「ある日、故郷Tambunanタンブナンの市場で野菜を買い、子供のころ食べていた料理を作ってSNSにアップしたところ、なつかしい! 食べてみたい!と多くの反応があったんです。たしかに、このような民族の料理を食べられる店はあまりありません。私のやっている活動の意義を実感したんです」とサンドラさん。


野菜のパワーを感じる料理の数々

カダザン・ドゥスン族の料理は、全体的にシンプルな味つけ。基本の調味料は塩で、果物の酸味や唐辛子の辛味をアクセントに使います。油はほとんど使わず、うま味は干し魚など乾物によるもの。パラッとした食感の赤米に合うおかずが並びます。

カラフルな見た目なのは、野菜を多用するため。鮮やかな黄色は、ワイルドマンゴーとよばれるバンバンガン、オレンジ色に見えるのはトウガラシ入りのショウガ科トゥハウで、どちらも塩漬けにして保存性を高めたご飯のおともです。

人気の民族料理がセットになったのが、こちら。

Traditional Linopot Set Pinasakan Basungang RM20.90

右皿の中央は「Bario Riceバリオライス」とよばれる陸稲。生産量が少なく、栄養価が高いため、市場では高値で取引されています。ちなみに、葉に包んで提供される(Linopotリノポットという)ことが多く、この葉が皿がわりになります。

おかずは6種で、右の鮮やかな黄色がフルーティーな酸味が特徴の「Bambanganバンバンガン」。そこから時計回りに、生魚をカラマンシーの搾り汁でしめたサラダ「Hinava Ikan Tenggiriヒナヴァ・イカントゥンギリ」。塩魚をサンバルで炒めた「Sambal Ikan Masin Lada Putihサンバル・イカン・マシン・ラダ・プティ」。島ラッキョウ似の野菜とショウガ科の花のあっさりした炒めもの「Losun Bunga Kantanロスン・ブンガ・カンタン」。ショウガ科の植物の茎を塩漬けにした「Tuhau トゥハウ」。それに、辛いサンバルとしょっぱい塩卵が付いています。

左の皿は選べるおかずで、「Pinasakan Basunganピナサカン・バスンガン」をチョイス。やさしい味の魚のスープで、コク深さは「Takob Akobタコバコ」という酸味のある食材によるもの。


また、大人数で訪れたら、アンブヤットのセット料理もおすすめです。

6種のおかずに、アンブヤットがセットになっています。アンブヤットとは、サゴ粉を熱湯でねったもので、餅のような食感のでんぷん質の主食。スープと一緒につるんといただきます。

イカのフライ、魚をカリッと揚げたものは、日本人にもなじみのある味。お好みでサンバルをつけて、どうぞ。


めずらしいワンカップ・ローカル酒!

もうひとつ、この店でぜひ味わって欲しいのがローカル酒です。

「Tumpung トゥンプン」とよばれる米の酒で、提供方法がとてもユニーク。麹を混ぜて発酵させたご飯、つまり酒の“もと”がカップに入っていて、それに水を注いで待つこと約15分。すると即席酒ができあがり! 先をつぶして米が入らない専用のストローで飲みます。

カップに1回に注げる水は60ミリ程度と少量。3回は注ぎ足しOKなので、約1合ほどの酒になります。

飲んでみると、日本酒のようなほのかな甘みに、ふくよかな香り。変な匂いはまったくせず、とてもおいしい酒でした。サンドラさんによると、アルコール度数は10~11%で、水を加えなければ、半年ほど保存可能(もちろん発酵はすすむ)とのこと。

ちなみに、コタキナバル在住の日本人ガイド、志帆さんによると、毎年5月末に開催されるサバ州のお祭り「カアマタン」では、このトゥンプンが会場で販売されるそうで、祭りに欠かせないサバ州のローカル酒です。


そして、もうひとつ情報。

かつてカダザン・ドゥスン族にとって貴重なたんぱく源であったサゴ虫の幼虫さん Butod ブトッ。この貴重な食文化を姉妹店「Native Cafe」で体験することができます。

今回、編集部Otoがブトッに初挑戦! 口に入れるまで色々大変でしたが、かじってみると、匂いも味もゼロで、お腹を壊すこともなく、とてもよい体験になりました。実食してみてわかったのは、生のブトッを食べるのは、勇気だけでなく、スキルも必要ということ(今度、文化講座などで話しますね)。ハードルはありますが、伝統の食文化に触れられる絶好のチャンスです。

ボルネオの民族料理が味わえる貴重なレストラン「マイ・ネイティブ・サバ」。コタキナバルで、ここに暮らす人の家庭料理を食べてみたい方、また野菜料理が好きな方は、ぜひお立ち寄りください。

サンドラさん(中央)を囲み、右からサバ州観光局のウェンインさん、ハンフリーさん、大学生の楓さん、そしてガイドの志帆さん

店情報
My Native Sabah 
1st Floor, Block F, Plaza 333 Penampang, Penampang, Malaysia

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です