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マレーシア映画コラム#8 アイ・オン・ザ・ボール: マレーシアのヒーローたち [WAU No.24]

映画『Eye On The Ball』は、今年末にマレーシア国内での上映が予定されている。収益は、ブラインドサッカーの発展のために寄付の予定

 本作は、マレーシアの主要紙『ザ・スター』で調査報道を手がける制作会社《R.AGE》のシニア・プロデューサー、イーウェン・チェン監督による長編ドキュメンタリーです。特異な才能、社会で見過ごされがちな問題に焦点を当ててきたチェン監督が、東南アジアのパラスポーツ界で奮闘するブラインドサッカーのマレーシア代表チームを追いました。”Harimau Buta(盲目の虎)”と呼ばれるチームは、2015年のASEAN Para Gamesで優勝、40カ国中16位の実力です。

 選手の多くは、成長の過程で視機能に障害を負った中途視覚障がい者です。一人では何もできないと思われ、サッカーを始めた当初は家族や親友からの理解を得られなかったと言います。しかし、彼らは、自分たちの力で成功への道を切り拓けることを証明したかったのです。

 概してパラチームの資金は限られており、選手生活の傍ら、マッサージ師やテレフォンオペレーターなど様々な仕事をしています。そんな彼らをまとめあげているのが、コーチであるサニー・シャレシュ氏です。自身も脳性麻痺を患う大切な弟を持つ彼は、会社での安定した仕事を辞め、障がい児のためのスポーツ教育センターの運営を始めました。本作の完成のためにチェン監督を勇気づけ、奮い立たせたのもまたサニーコーチでした。

 私たちは超人的なパワーを持つヒーローに憧れがちですが、選手たちが懸命に努力する姿、人生で成功することができないと言われ続けても、自分たちの心の声に耳を傾け、精一杯生きる姿はまさに人生のスーパーヒーロー。心を動かされました。

文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan
翻訳/上原亜季 Aki Uehara


A・サマッド・ハッサン

マレーシアの映画製作者として受賞歴のあるインディーズ作品から大ヒット作まで約100の長編映画製作に携わる。非常勤講師のかたわら映画やマレーシア文化、黒魔術などについて講演もする。神戸にて留学経験があり、オヤジギャグを愛する。

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