映画FILM

銀幕の精神#17 Prebet Sapu カラフルな都市を覗き見る

Prebet Sapu: A peek into a colorful city

Muzzamer Rahman 監督作『Prebet Sapu』

優れた映画関係者を多く輩出している、マラ工科大学(UiTM)出身の Muzzamer Rahman ムズアメール・ラーマン監督のデビュー作で、2020年の作品です。父の死後、新たな人生を歩むためにKLに移り住んだマレー人青年アマン(アメルル・アフェンディ役)の物語。学位がありながら夢であった作家としての人生を歩めず、タクシー配車サービスのドライバーとして生計を立てなければならない。しかし、アマンは色覚異常のため運転免許を取得することができず、「サプー」と呼ばれる違法なドライバーとして乗客を乗せることを余儀なくされます。同居人に家を追い出されたアマンは、お金を持たずに車を走らせ、自分を雇ってくれる唯一の人物、ベラ(リム・メイフェン)という謎めいた中国人のエスコート嬢に出会うのです。

主演のアマンを演じるのは、現在、マレーシア映画界でもっとも活躍する俳優の一人Amerul Affendi ©️Muzzamer Rahman

白黒で撮影されたこの映画には、マレーシアの人種関係に対する監督の見方が反映されており、この映画の見どころのひとつとなっています。街には多様な文化や様々な国の人々が溢れていますが、無彩色の映像では肌の色だけでは区別がつきません。私たちは皆、きらびやかな都市にとらわれ、生き残るために暴力的にならざるを得ない、同じ人間。人種は関係ないのです。

もうひとつ、この映画のユニークな点は、普段は観光客に敬遠されるような場所が登場することです。貧しい市民や村からの移住者、不法移民などが月150〜300リンギット程度で部屋を確保できるような場所。Lorong Hj Taib、Chow Kit、Sri Sarawak public housing、そして有名な高層ビルの横にある様々な公共アパートメントがその例です。これらの地域には、ネガティブなイメージはあるものの、最も人気のある食事スポットや安いウェットマーケットには活気があり、フュージョン料理を高値で売る「モダン」な地域とは対照的に描かれています。

この映画には、Sharifah Amani、Bront Palarae、Nam Ronなど、マレーシアでおなじみの俳優も出演し、マレーシアを代表して第94回アカデミー賞国際長編映画賞に出品された注目作です。

『Prebet Sapu』は現在、Netflix(マレーシア)で “Hail, Driver!”の英語タイトルで配信中

予告編:

Prebet Sapu トレーラー

文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan
翻訳/上原亜季 Aki Uehara


A・サマッド・ハッサン

マレーシアの映画製作者として受賞歴のあるインディーズ作品から大ヒット作まで約100の長編映画製作に携わる。非常勤講師のかたわら映画やマレーシア文化、黒魔術などについて講演もする。神戸にて留学経験があり、オヤジギャグを愛する。

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