映画FILM

マレーシア映画コラム#15 「SIAR」で80年代の 映画作品を再訪 [WAU No.31]

Revisiting the films of the 80s with “SIAR“.

『Matinya Seorang Patriot』兄弟が戦うシーン

 1980年代のマレーシアは、マハティール・モハマド元首相の構想により、新しいビジョン、現代的な国家への希望にあふれていました。一方で、当時の映画作品には、その現代化の裏側で起こる多様な社会問題が取り上げられました。
 まず、ラヒム・ラザリ監督の『Matinya Seorang Patriot』(1984)は、成功を収めた実業家の突然の死の真相を、息子たちが追求する物語です。彼らは、母親が米国人カメラマンのヌードモデルとなったことを知り、衝撃を受けた父親が心臓発作で亡くなったことを突き止めます。その結果、母親の名誉を守ろうとする身内との間で論争となり、家族の関係は引き裂かれます。そして最後には、兄弟間で死闘が繰り広げられるのです。監督が表現したかったのは、急速に現代化する社会の中で、貞節を重んじる保守的な家族観を取り戻したい、という思いでした。

『Kembara Seniman Jalanan』ポスター

もう一つ、ナシール・ジャニ監督の『Kembara Seniman Jalanan』(1986)は、音楽業界の課題に対する一つのアプローチを描いています。主人公の歌手ブジャン(M・ナシール役)は、故郷からクアラルンプールに出てくると、発言の自由や同性愛などオープンな関係を目の当たりにし、都会と田舎の生活の違いに驚きます。歌手として成功した彼でしたが、音楽商品を違法に複製し販売する海賊版や、それを擁護する芸能業界によって打ちのめされます。ナシール監督は、海賊版を撲滅しようとアーティストたちに訴えたのです。 

「SIAR」では、これらの映画を含め、これまで見る機会を失われていた80〜90年代の多くの作品が配信されています。

※SIAR (https://siar.my)… マレーシアの動画配信サイト。一部英語字幕付き。

文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan
翻訳/上原亜季 Aki Uehara


A・サマッド・ハッサン

マレーシアの映画製作者として受賞歴のあるインディーズ作品から大ヒット作まで約100の長編映画製作に携わる。非常勤講師のかたわら映画やマレーシア文化、黒魔術などについて講演もする。神戸にて留学経験があり、オヤジギャグを愛する。

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