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マレーシア映画コラム#10 Motif:一夫多妻制がかかえる複雑さと殺人事件 [WAU No.26]

『Motif モティフ』一夫多妻制がかかえる複雑さと殺人事件

行方不明の少女アンの父親フセイン(役ロシャム・ノー)

 ナディア・ハムザ監督の長編映画デビュー作『モティフ』は、タナメラという小さな町で行方不明の少女アンの捜索にあたる女性警部補デウィの物語です。都会の警察本部から送り込まれたデウィは、即座に、コミュニティ全体が闇のような秘密を隠蔽していることを疑い始めます。町の住民、とくに町の有力者であるアンの父親フセインは、気の強いデウィを受け入れられません。女性に対して偏見を抱いているのです。一方、デウィ自身も、私生活では、「第二夫人」として夫との関係性に苦しんでいました。デウィとフセインは、互いの偏見や苦悩を押しやり、アンを探し出すことができるのでしょうか。

シャリファ・アマニ演じる女性警部補デウィ

 マレーシアではイスラム教徒の男性は、経済的能力があり、複数の妻を平等に扱うことができる場合、合法的に4人まで妻を娶ることができます。しかし現実的には、「一夫多妻制(複婚)」の話題はタブー視され、第一夫人以外を軽蔑する傾向にあります。また今の若い世代、とくにフェミニストらは、複婚を正当化するべきではないと考え、第二夫人以降には婚姻関係について口外しないよう強要します。『モティフ』は女性に対するマレーシア社会の偏見や複婚に対する差別を描いているのです。

 ナディア監督は、ニューヨーク大学芸術学部の卒業生で、短編作品『Hujan Panas(お天気雨)』(2011)は米国で高い評価を受けました。さらに2019年には、いじめ撲滅を訴える公共広告で、フランスの「カンヌライオンズ」銅賞を受賞しています。今後の活躍が期待される監督です。

*『モティフ』は、2019年9月に公開され、現在、マレーシアではネット動画配信サイトiFlixにて視聴可

文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan
翻訳/上原亜季 Aki Uehara


A・サマッド・ハッサン

マレーシアの映画製作者として受賞歴のあるインディーズ作品から大ヒット作まで約100の長編映画製作に携わる。非常勤講師のかたわら映画やマレーシア文化、黒魔術などについて講演もする。神戸にて留学経験があり、オヤジギャグを愛する。

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