映画FILM

《ヤスミン・アフマド特集上映》シャリファ四姉妹、ピート・テオによるスペシャルトーク

《ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映》シャリファ四姉妹、ピート・テオによるスペシャルトークに参加してきました。

スペシャルトークは、まずマレーシアでも話題になり、愛されたヤスミン監督によるテレビCMの紹介から始まりました。監督による多くのCMの中でも有名な、マレー系の女の子に恋をする中国系の男の子「Tan Hong Ming君の恋」には日本の観客も心を動かされたようです。「ただ商品を売るためのCMではなく、マレーシア人のアイデンティティや多民族社会であるマレーシアの理想の姿を描いたストーリー性のあるCMを最初に手がけたのがヤスミン監督だった。ペトロナスは、最高のストーリーテラーを見つけ、起用したのです!」とまず語ったのは、シャリファ・アマニ。

続いて、シャリファ四姉妹それぞれのヤスミン監督との出会い、そして音楽家ピート・テオがヤスミン監督と仕事をするようになった経緯などを紹介。その後、ヤスミン監督の長編全6作を最初の『ラブン』から時系列的に一作ずつ、ストーリー、撮影秘話、役者の監督とのエピソード、社会に与えた影響、作品に対する想いなどを約2時間にわたりゲストが語り尽くす、というなんとも贅沢なトークでした。まさにヤスミン・アフマド監督に想いを馳せる没後10周年記念の特別な時間となりました。

ヤスミン監督のミューズとなり、ヤスミン作品において欠かせない女優となったシャリファ・アマニ。当時17歳だったアマニが三つ年上の長女アレヤと夜中3時に街中で、家族ぐるみで付き合いのあった俳優・劇作家のジット・ムラッドと一緒にいたヤスミン・アフマドと出会ったことから、この四姉妹とヤスミン映画の関わりは始まります。アマニもアレヤもそんな夜中に民族衣装「バジュ・クロン」にスニーカーを履く風変わりな女性がヤスミン監督だとは認識していなかったと言います。

長女シャリファ・アレヤ
次女シャリファ・アマニ

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初の出会の後、オーディションに呼ばれて『細い目 Sepet』の主役オーキッド役を演じることになったシャリファ・アマニ。オーディションを通して『ムクシン』の母親イノム役が決まった長女アレヤ。その姉の台本を読んで、「ちょっとわんぱくで男の子っぽく、いつも男の子たちと遊んでいる女の子は自分だ!」と衝撃を受けて、自らヤスミン監督に電話でこの役を演じたいと迫った、当時10歳の四女アルヤナ。妹の『ムクシン』の撮影現場にいつも付き添い、ヤスミン監督の横に黙って座り、モニターを眺めていた三女アレイシャ。自分もヤスミン作品に出たいと思いつつ、当時あまり自分に自信がなく、芯のあるオーキッド役にははまらないし、オーキッドの世界に自分は合わないと思っていたアレイシャは、その約2年後にヤスミン監督に呼ばれて、イスラムのコーランやキリスト教の聖書の引用も用いながら宗教をテーマに描かれた『ムアラフ-改心』に姉アマニとともに出演することになります。

ヤスミン監督に電話をしたと語る、四女シャリファ・アルヤナ

 

三女シャリファ・アレイシャ

今回、四姉妹それぞれの話を聞き、彼女たち自身の関係性や性格を見たり、彼女たちの両親を含めた家族の話を聞き、ヤスミン映画がこの四姉妹ととても深い関係にあったことが分かりました。

ヤスミン監督は、それまでのマレー系女性の従順でときに悲劇的な描かれ方とは違うけど、よりリアルな女性像を映し出したり、「夫は外で働き、妻は家庭」という従来の結婚観とは違う、「教育を受けた教養のある妻と夫」という夫婦の姿を描いたり、人種も宗教も関係なく、臆さずオープンに人々を愛するなど、それまでのマレーシア映画の世界にはあまり見られなかった表現が多い上、社会的、政治的に危険をはらんだ様々な要素が物議をかもしたり、批判を受けることも多かったといいます。

ヤスミン監督は「ある時、私の膝に突っ伏して、『自分はストーリーを語りたいだけなのに、なぜそんなに批判を受けるのか』と涙を流すこともあった」とアマニは振り返ります。

そして、《許し》《信仰心》《愛》をテーマに描かれた『ムアラフ』という難しい作品にも出演したアマニにとって、最も心に残っているシーンは、「毎晩ロハニとロハナ姉妹が互いを許し合い、その日関わった身の回りの人たちを憎んだりせず許すことができるのか、と語り合うシーンだ」と一瞬涙をグッとこらえながら語ってくれたのはとても印象的でした。

ローカルな世界を描くことで、より普遍的な物語を紡いだヤスミン・アフマド監督の作品については、演じた役者、撮影に関わった人々、観客、それぞれの心に響くシーンやエピソードがあり、監督のユーモアあふれる描写なども含めて、自分が生きる世界と重ね合わせながらみんなが嬉しそうに語る、というのも特徴ではないかと今回ふと思いました。

ヤスミン・アフマド監督特集上映は、823日まで、これから約1カ月間続きます。全作見られる貴重な機会です。ぜひ、作品を見て、ヤスミン談義に花を咲かせてください。

 

 

ピート・テオさんのヤスミン監督との関係や音楽については、また改めてご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

文・上原亜季 Aki Uehara  写真・古川音 Oto Furukawa

 

【伝説の監督 ヤスミン・アフマド 没後10周年記念 特集上映】

 

日程:2019年7月20日 (土)〜8月23日 (金)
会場:シアター・イメージフォーラム(渋谷区)
上映作品:『ラブン』『細い目』『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ-改心』『タレンタイム〜優しい歌』
『15 マレーシア』
公式サイト: http://moviola.jp/yasmin10years

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。