マレーシアは名建築の宝箱。熱帯の気候、多民族のおりなす文化的な多彩さ、また施主と建設技術者の奮闘は、多くの魅力ある建築を生み出しました。それぞれの建物にはマレーシアの社会や歴史、日々の暮らしがよく表れています。また著しい経済成長は、新しい建築を次々に生み出しています。
ここでは、マレーシアの建築の魅力とともに、それぞれが建てられた時代や背景、その見どころに迫りたいと思います。
その2 クアラルンプール国際空港 (Lapangan Terbang Antarabangsa Kuala Lumpur)
名称:クアラルンプール国際空港 (Lapangan Terbang Antarabangsa Kuala Lumpur)
設計:黒川紀章(黒川紀章建築都市設計事務所)等
夜間飛行のあと、早朝のクアラルンプール国際空港(KLIA)着で、息をのむのが、曙のマレーシアの空の美しさでしょうか。そして、内部空間はあふれる熱帯の緑と光。曲線美をほこる大屋根。巨大な吹き抜けとカラフルなインテリアが、世界の旅人をマレーシアに迎えます。KLIAには、熱帯の植物と木の素材感があふれています。
設計は日本人建築家、黒川紀章。多くの名建築とともに、世界の建築界をとりこにした「メタボリズム建築」の概念と「共生の思想」を提示したことで知られていました。曲線を多用した独特の造形性と、生き物でもない硬いはずの建築が、新陳代謝することを構想しました。
空港建築は、まさしく変化の建物です。旅客や貨物の増減、航空技術の進化、市場ニーズの変化もめまぐるしい。そこで、黒川らはKLIAの設計でもこの「メタボリズム」の考えを生かしたのです。
例えば「メインターミナル」でおなじみの円錐形の柱に曲面の屋根がかかる部分は、これが繰り返し増殖し大屋根となる。今後の変化に応じて増築も可能になります。
クアラルンプール国際空港は世界の空港建築の発展のメルクマールとして記憶されるのではないでしょうか。
写真、イラスト:宇高雄志
※ 【短縮版】 本記事は期間限定公開につき、2023年3月26日にて第2回「クアラルンプール国際空港(KLIA)」本編公開を終了し、以降「短縮版」として掲載しております。
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宇高 雄志(うたか・ゆうし) 兵庫県立大学・環境人間学部・教授
建築学を専攻。広島大学で勤務、シンガポール国立大学、マレーシア科学大学にて研究員などを経て、現職。都市や建築空間にみる多様性と調和について研究しています。学生時代から様々な建物を求めてアジア諸国を放浪。マレーシアの多様な民族の文化のおりなす建築の多彩さに魅かれています。ジョホール州に半年ほど、その後、ペナン州に足かけ3年間滞在しました。家族のように思える人とのつながりが何よりの宝です。(ウエブサイト:https://sites.google.com/site/yushiutakaweb/nyusu)
※ 本コラム「マレーシア名建築さんぽ」(著者:宇高雄志)は、最新版のみ期間限定掲載となります。写真、イラスト等を、権利者である著者の許可なく複製、転用、販売などの二次使用は固くお断りします。
*This column, “Malaysia’s Masterpieces of Architecture” (author: Prof. Yushi Utaka) will be posted only for a limited period of time. Secondary use of photographs, illustrations, etc., including reproduction, conversion, sale, etc., without the permission of the author, who holds the rights, is strictly prohibited.