マレーシアは名建築の宝箱。熱帯の気候、多民族のおりなす文化的な多彩さ、また施主と建設技術者の奮闘は、多くの魅力ある建築を生み出しました。それぞれの建物にはマレーシアの社会や歴史、日々の暮らしがよく表れています。また著しい経済成長は、新しい建築を次々に生み出しています。
ここでは、マレーシアの建築の魅力とともに、それぞれが建てられた時代や背景、その見どころに迫りたいと思います。
その4 バングナン・スルタン・アブドゥル・サマド:クアラルンプール色の煉瓦をまとって
名称:バングナン・スルタン・アブドゥル・サマド (Bangunan Sultan Abdul Samad)
設計:A.C. Norman, R.A.J. Bidwell
ムルデカ広場:マレーシアのただなかで
クアラルンプールのムルデカ(merdeka:独立)広場。このまんなかに立って、ぐるりと一周すると、「マレーシアを見た」と思うのは行きすぎでしょうか。
まずは南に、高さ95メートルの掲揚柱で翻る、巨大なマレーシア国旗。この右手にはハーフティンバーの壁と、柿色の瓦屋根がかかったロイヤル・セランゴール・クラブがみえる。さらに北側に回るとセントマリー教会。そしてこの広場の正面に、今回とりあげるバングナン・スルタン・アブドゥル・サマドが鎮座している。
ムルデカ広場を囲むこれらの建物の背景には、マレーシアという国家の屋台骨を担う行政機関や商業ビルが屹立しています。それぞれに特徴ある形の高層ビルやタワーです。まさしく英領期から現代にいたるまでにマレーシアが経験した時間の流れと、社会の多様性が、この風景に映し出されています。
文、写真、イラスト:宇高雄志
※ 【短縮版】 本記事は期間限定公開につき、2023年9月16日にて第4回「バングナン・スルタン・アブドゥル・サマド」本編公開を終了し、以降「短縮版」として掲載しております。
宇高 雄志(うたか・ゆうし) 兵庫県立大学・環境人間学部・教授
建築学を専攻。広島大学で勤務、シンガポール国立大学、マレーシア科学大学にて研究員などを経て、現職。都市や建築空間にみる多様性と調和について研究しています。学生時代から様々な建物を求めてアジア諸国を放浪。マレーシアの多様な民族の文化のおりなす建築の多彩さに魅かれています。ジョホール州に半年ほど、その後、ペナン州に足かけ3年間滞在しました。家族のように思える人とのつながりが何よりの宝です。(ウエブサイト:https://sites.google.com/site/yushiutakaweb/nyusu)
※ 本コラム「マレーシア名建築さんぽ」(著者:宇高雄志)は、最新版のみ期間限定掲載となります。写真、イラスト等を、権利者である著者の許可なく複製、転用、販売などの二次使用は固くお断りします。
*This column, “Malaysia’s Masterpieces of Architecture” (author: Prof. Yushi Utaka) will be posted only for a limited period of time. Secondary use of photographs, illustrations, etc., including reproduction, conversion, sale, etc., without the permission of the author, who holds the rights, is strictly prohibited.