忘れられないあの味。あの通りの一角にまだあのおじさんはいるだろうか。一度その町を離れても、また戻ってきたくなる味があります。
中華寺院の前でニョニャ・クエ(お菓子)を売る麦わら帽子に立派な口ひげが印象的なおじさん。三輪自転車に大量のお菓子をぶら下げたマレーシア版駄菓子屋さんは、行く先々で子供達に囲まれます。大きな鍋にぐつぐつと何かを煮込みながら、笑顔を向けてくれる女性は、特製スパイスの量を好みで調整して持ち帰る麺料理屋さんでしょうか。
ペナン島では街角で食べ物を売る人々をよく見かけます。何を売っているのか尋ねてみるといいでしょう。そこから会話がうまれ、売られている物にまつわる話から、彼らがもう何十年もその場所で街の変化を感じながら行き交う人々を見つめ、変わらず物売りをしていることを教えてくれるかもしれません。様々な人間模様が折り重なる街角、それぞれにストーリーがあって、面白い。声をかけると、またこの町が好きになりそうです。
[この記事はWAU No.15(2018年3月号)から転載しています。]