マレーシアの祭事には、民族や宗教によって様々な習わしや祈りの形があり、それぞれに特別な料理があります。互いの文化を尊重し、お祝いの日には民族を越えて自宅を訪問し合うという風通しのよさもこの国の魅力。祭事の時期に合わせて旅をすると、よりディープにマレーシアを体験できるでしょう。
Hari Raya Aidilfitri
[ハリラヤ・アイディルフィトリ]
2019年6月5日・6日(変更の可能性あり マレーシア全土の祝日)
イスラム教徒であるマレー系の人々は、1カ月間の断食月「ラマダン」が明けると「ハリラヤ・アイディルフィトリ」と言われる大祭を迎えます。多くの人は実家に帰省。ハリラヤ初日の朝、男性がモスクでの特別な礼拝を終えて帰宅すると、家族ごとに色や柄をそろえて新調した晴れ着で着飾った親戚一同がサラーム(マレー式の握手)をしながら過去一年間の罪や過ちを許し合い、挨拶をします。そして、日本のお正月のように特別なご馳走を囲み、子供たちはお年玉をもらうのです。
この時期の料理に欠かせないのが、ヤシの葉で包んだお米を茹であげた「クトゥパッ (Ketupat)」と牛肉の煮込み料理「ルンダン(Rendang)」、竹筒にココナッツミルクと餅米を入れて炊いた「レマン(Lemang)」。地域によっては野菜がたっぷり入ったスープカレー「ロントン・サユール・ロデ(Lontong Sayur Lodeh)」も特別料理。そして、友人宅を訪問しあうオープンハウスで提供されるビスケットなど、いろんな種類のお菓子「クエ・ラヤ(Kuih Raya)」も重要です。
Chinese New Year
[春節・中国正月]
2019年2月5日(マレーシア全土の祝日)
中国系マレーシア人は、旧暦の正月を祝います。この時期、赤いランタンや縁起物の装飾、干支にちなんだ飾り付けなどで町中が赤く染まり、とても華やかです。友人、ご近所、取引先などにミカンを贈る習慣もあり、店頭に積み上げられた箱売りのミカンも風物詩。新年が明ける前に大掃除を済ませ、大晦日には家族そろって夕食をとり、新たな年をみんなで迎えます。元旦は、赤い衣装で着飾る人も。お年玉は「紅包(アンパオ)」とよばれます。
店先やショッピングモールなどでは、太鼓、銅鑼、シンバルのリズムにあわせて舞う「獅子舞」を見かけます。幸運を呼び込む獅子舞、マレーシアではアクロバティックで高度な技術を誇るグループが多数活躍しています。 中国正月の特別料理は「魚生(イーサン)」。親戚、友人などと食卓を囲み、野菜、サーモン、ピーナッツ、柑橘類などの具材をみんなで一斉に菜箸を使い、願掛けしながら豪快に混ぜ合わせる、という縁起物の料理です。
Deepavali / Diwali
[ディーパバリ/ディワリ]
2019年10月27日(サラワク州以外 全土の祝日)
ヒンドゥー教徒にとって最も重要な祭事の一つが、善(光)が悪(闇)に勝利したことを象徴し、「光の祭典」ともいわれる「ディーパバリ」(インド本国では「ディワリ」とよぶ)です。当日は、明け方、オイルバスで心身を清め、新しい衣装に身を包み、寺院に参拝します。寺院では、花飾りや果物、ココナッツミルクなどの供物が捧げられます。自宅では、玄関先やバルコニーなどにオイルランプを灯し、家中を明るく保ちます。また、カラフルに色付けされたお米や米粉を使って床に色鮮やかな絵を描く「コーラム(Kolam)」が空間を華やかに演出します。
ショッピングモールなどで見られる、花や孔雀などをモチーフに、細かく繊細でありながら、ダイナミックに彩られたコーラムは、とても美しいものです。 ディーパバリでは、インド系の伝統菓子、豆粉で作るスパイシーな揚げ菓子「ムルク(Muruku)」や甘いお菓子「ミタイ(Mithai)」などが祝宴の中心となるようです。ご近所や友人にお裾分けするのも習わしです。
サバ州・サラワク州
マレー半島と民族構成が大きく異なり、それぞれ30以上の先住民族が暮らすボルネオ島のサバ州とサラワク州では稲作が暮らしの中心であったため、「収穫祭」が開催されます。
Tadau Kaamatan
[タダウ・カアマタン]
2019年5月30日・31日(サバ州、ラブアン島 のみ祝日)
サバ州のカダザンドゥスン族にとって大事なのは、お米の精霊に感謝の気持ちを捧げる収穫祭「カアマタン」です。各地域、各村でもお祭りが開催されます。また、州全体から様々な先住民族がプナンパンのカダザンドゥスン文化協会(通称KDCA)に集まり大祭が開かれ、伝統楽器の演奏や伝統舞踊が披露されるほか、ビーズ細工や民芸品も販売されます。「サバ州美女コンテスト」も注目の的。
Gawai Dayak
[ガワイ・ダヤク]
2019年6月1日・2日(サラワク州のみ祝日)
サラワク州のイバン族とビダユ族の収穫祭「ガワイ」。村人が共同生活をしている伝統的な住居「ロングハウス」では、お米が原料の地酒「トゥア(Tuak)」や伝統料理、米粉、砂糖、ココナッツミルクで作ったお菓子などが用意され、自然や大地の神々へと捧げ、感謝をすると同時に豊作、繁栄、長寿などを願います。民族衣装に着飾りお祝いすることもあります。