シンガーソングライター、映画音楽作曲家、監督、プロデューサーとして幅広く活躍するピート・テオPete Teo氏。改めてヤスミン・アフマド監督作品との関わり、その後の活動に注目。

 2018年の東京国際映画祭にて特集上映が企画されるなど、日本でも注目を集めるピート・テオ。今夏、東京で没後10周年記念上映があったマレーシアの伝説的な映画監督ヤスミン・アフマドとは「盟友」として仕事を共にし、長編遺作『タレンタイム』(2009)では音楽を担当。学生たちが歌う楽曲から挿入歌まで、各シーンと共に記憶に残る音楽が、この作品の魅力をより一層高めています。多様な民族、宗教、言語を背景とした高校生たちの葛藤、恋愛、家族愛を描いた同作の音楽制作について「若者たちは大人とは違った目で世界を見ています。シンプルで純粋な若者の心を大人の僕がどう表現するのか。プロの演奏家を起用しながら子供らしい演奏に仕上げることにも苦労した」と振り返ります。

 2009年3月に『タレンタイム』が初公開され、7月にヤスミン監督が急逝する直前、今後彼女の10作品に音楽を提供することを約束していた、と語るピート。次作のテーマ曲として仕上げた曲は、その後、ピート監督短編作品『Hari Malaysia(マレーシア・デイ)』に採用。

 その後、ピートは俳優業の傍ら、特に政治的なメッセージを持った短編映画を手掛けます。若い世代に投票に行くよう呼びかけたミュージックビデオ『Undilah』(2011)が、2018年、マレーシアで初の政権交代を起こす原動力の一つとなったことは確かでしょう。「社会・政治状況に対する《怒り》の感情が創作活動におけるエネルギーの大半になり、個人的な感情を表現することより、人々のために発信する方が重要だと感じるようになった」と、ここ数年は自身のプライベートな音楽活動を休止。

 ところが2013年頃からは政治的な表現活動が社会的に危険な状況になり、ピートはクアラルンプール近郊に拠点を移してオーガニック農園を始めます。彼にとって「音楽、映画、農業はツールが違うだけで表現活動に違いはない。今は、土、石、岩を使ってクリエイティブな仕事をしているのだ」とピート。音楽活動も再開したいという、彼の幅広い創作活動から今後も目が離せません。

『タレンタイム』のサウンドトラックCD