From Saga with Love.
プロデューサー、Lina Tan (リナ・タン)氏によるロマンチック・コメディドラマ『From Saga with Love (フロム・サガ・ウィズ・ラブ)』(全10話、2023)。これまでに『Kami Histeria』(2014)、『Gol & Gincu Vol. 2』(2018)、『Sa Balik Baju』(2021)などのヒット映画作品を手がけてきた、Umi Salwana (ウミ・サルワナ)氏 が監督を務めました。
不器用だけど気立てのいい主人公カルマ(シティ・カディジャ・ハリム役)は、有名女優ビアンカ・ロザリオ(ソフィア・アルバラクバ)の通訳/付き人の職を得るため、日本語が話せると嘘をつき、彼女とともに日本の佐賀県を訪れます。しかし、佐賀在住の陶芸家見習いで日本語が堪能なマレーシア人・シャム(イクマル・アムリ)にその秘密がバレてしまい、物語は展開します。カルマはあらゆる手を使ってなんとか仕事を失わないよう奔走します。
このドラマシリーズは、動画配信サービス 「Viu Malaysia」 と佐賀県フィルムコミッションの支援、協力のもとで制作され、クアラルンプールと佐賀県にて撮影が行われました。インタビューのなかでウミ監督は、「街の人々みんなが私たちを歓迎し、受け入れてくれた」と、終始アットホームな雰囲気で行われた撮影を振り返りました。多くの人がボランティアで撮影を手伝ってくれたと言い、ある老夫婦は、撮影クルーが寒さに凍えていると聞くと、毎日撮影現場に温かいお茶を入れてくれたり、近所の人たちも、差し入れを持って訪ねてきてくれたと撮影エピソードを語ってくれました。
撮影オフ日には、ウミ監督は行き当たりばったりの列車旅を楽しみ、佐賀県西部の伊万里市を訪れ、美味しい焼肉に出会うなど、佐賀散策を楽しんだようです。佐賀県での撮影は地元の人々からの優しさに触れ、全体を通して穏やかに進められました。美しい自然環境と人々との愛あふれる交流が制作チームに良いバイブレーションを与えたことは間違いなさそうです。「佐賀から愛を込めて」というドラマのタイトル通り、素晴らしい撮影体験であったとウミ監督は振り返ります。
そしてもちろん、マレーシアと日本を舞台にした作品として、女優シャリファ・アマニと彼女の実の母親ファティマ・アブ・バカールの特別出演は、必然でした。ヤスミン・アフマド監督の『細い目 (Sepet)』のオーキッド (Orked)役で日本の観客にもよく知られているアマニは、本作でカルマの姉を演じ、姉妹ゲンカの喜劇を繰り広げます。ファティマはカルマの母親を演じています。
マレーシアではマレー系中心で、ドタバタ劇や内輪ウケの派手なユーモアに頼りがちな地元のコメディ作品が多いなか、本作は新しいスタイルのコメディ・シリーズを生み出すことに成功していると言えます。脚本家・ラフィダ・アブドゥラや、ウミ・サルワナ監督を筆頭とする若手脚本家と若手俳優の組み合わせ、そしてこの若いチームが新しいスタイルの創造に意欲的であったことが成功の鍵と言えるでしょう。
今年の秋にマレーシアでシーズン2が公開されるのを機に、『From Saga with Love』の日本語字幕版が動画配信サービス「ABEMA」にて、日本国内で無料配信中です。
ABEMA 『From Saga with Love』 (フロム サガ ウィズ ラブ)
予告編:
マレーシアドラマ『From Saga With Love』
佐賀県フィルムコミッションの誘致・支援のもと、2023年に佐賀県内で撮影
【作品タイトル】『From Saga, With Love(フロム・サガ・ウィズ・ラブ)』
【作品ジャンル】ラブコメディ/ドラマ
【話数】1話30分×10話
【佐賀ロケ地】佐賀市、唐津市、武雄市、嬉野市、吉野ヶ里町、有田町
【監督】Umi Salwana(ウミ・サルワナ)
【ストーリー】
SNSインフルエンサーを目指すカルマは、有名女優ビアンカ・ロザリオの通訳の仕事を経験がないのに引き受けてしまう。また、ビアンカの母親ケティから彼女の恋愛事情を探るという極秘任務も同時に言い渡されている。マレーシアから佐賀県へ来日し、慣れない土地で様々なトラブルが巻き起こる。頑張り屋だけどどこか抜けている天然で無邪気な主人公カルマ、美しくしっかり者の女優ビアンカ、専属カメラマンを務めるボブ、そして佐賀で陶芸修行中の寡黙なマレーシア人シャムの4人が佐賀で出会い、共にマレーシアへ帰国する。友情、愛情、失恋や裏切りなど様々な問題を乗り越えて、最後に待ち受ける4人の運命は?マレーシアと佐賀県で繰り広げられる4人の愛と友情を描いたラブコメディー。(ABEMA『From Saga with Love』より)
佐賀県のロケ地を巡れるよう、ドラマオリジナルの「デジタルロケ地マップ」も公開されています(日本語・英語・マレー語に対応)。マップ内の「撮影こぼれ話」もあわせて読むと、作品をより楽しめます。
文/A・サマッド・ハッサン A Samad Hassan
翻訳/上原亜季 Aki Uehara
A・サマッド・ハッサン
マレーシアの映画製作者として受賞歴のあるインディーズ作品から大ヒット作まで約100の長編映画製作に携わる。非常勤講師のかたわら映画やマレーシア文化、黒魔術などについて講演もする。神戸にて留学経験があり、オヤジギャグを愛する。