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ウー・ミンジン監督新作『Stone Turtle』ロカルノ国際映画祭にて受賞


At the 75th Locarno International Film Festival, the FIPRESCI Prize was awarded to “Stone Turtle” by Ming Jin Woo, the Malaysian director (2022)

 2022年1月にマレー半島東海岸のトレンガヌ州にて撮影された『Stone Turtle』(2022)。今年8月に第75回ロカルノ国際映画祭にて「国際映画批評家連盟賞」を受賞したことで注目を集めました。2014年以来、久々にウー・ミンジン監督とタッグを組み、『STONE TURTLE』ではプロデューサーと編集を兼務したエドモンド・ヨウさんに本作について聞きました。(*)

『Stone Turtle』は、マレー半島東海岸に伝わる民話をもとに、体制的な抑圧の中で、一人の女性が正義を求めるというメタファー的な物語です。マレーシアで今、最も活躍する俳優、ブロント・パラレ(Bront Palarae)やアメルル・アフェンディ(Amerul Affendi)のほか、インドネシアを代表する女優で、マレーシア映画にも出演経験がある、アスマラ・アビゲイル(Asmara Abigail)が出演しています。

『Stone Turtle』予告編映像

コロナ禍でも多様な才能が集結して作品製作

 この作品は、2020年にコロナ禍が始まり、最初のロックダウンの際にウー・ミンジン監督がエドモンドに構想を打ち明け、二人でアイデアを出し合い、監督が台本を書き始めたと言います。コロナの影響で何度か延期になり、2022年1月にようやく撮影を開始。アスマラのマレーシア入国後、1週間の隔離期間にはZoomでのリハーサルも行われ、この時、東京にいたエドモンドはリハーサルをリモートでチェック。撮影は1月末に終わり、その後、数ヶ月かけて作品を編集しました。

「アスマラを推薦してくれたのは、マレーシア、インドネシア両国で活躍するブロントでした。彼女はブロントがプロデュースした『ONE TWO JAGA』にも出演しており、二人はこれまでに何度か共演経験がありました。彼女のこれまでの作品は、私たちが心から尊敬するものばかり。とても素晴らしい女優です」とエドモンド。

 エドモンド作品でカメラマンを務めてきたタイ人のコンさんが、本作でも撮影を担当。また、アニメーションを手がけたのは、東京を拠点にスタジオジブリの『THE RED TURTLE』などの作品製作にも参加し活躍する英国人アニメーター、ポール・ウィリアムズ。と、多様なバックグラウンドをもつクリエーターたちが集結して作品を作り上げたことがわかります。

「私たちは、長年のコラボレーターである家族のような仲間たちと一緒に仕事をするのが好きな映画人です。互いに挑戦しあい、仕事を共にしていない期間にそれぞれが他の製作現場で経験を積み、スキルアップしたことを実感しあうことができる家族のような関係なのです。」

ロカルノ国際映画祭にてワールドプレミア

 作品完成と同時にいくつかの映画祭に応募を始め、数日後には世界で最も歴史ある映画祭の一つ、ロカルノ国際映画祭からメインコンペティション部門に招待されました。この部門に出品された2作目のマレーシア映画であり、マレー語を主要言語とした初の映画となりました。

「これは想像をはるかに超える出来事で、とても驚きました。実相寺昭雄、エドワード・ヤン、ラヴ・ディアス、濱口竜介など、私にとって映画のヒーローたちの多くが、ロカルノでキャリアをスタートさせ、あるいは高めてきたからです。」

ロカルノ国際映画祭に出席した『STONE TURTLE』製作陣。映画祭のディレクター Giona A Navarro氏とプログラマーの Pamela Bienzobas氏とともに

 8月上旬、ロカルノ国際映画祭における『STONE TURTLE』のワールドプレミアには、製作陣からウー・ミンジン監督、エドモンド・ヨウ、アスマラ・アビゲイル、ブロント・パラレとアメルル・アフェンディが出席し、3000人近い観客と共に本作を鑑賞しました。

「地球の裏側で、ずっと憧れていたこの映画祭で、熱狂的な映画ファンに向けてこの作品を上映できたことは、とても光栄で感慨深い瞬間でした。おまけに翌日には、ロカルノでミンジン監督の誕生日を祝うこともできたのです!」と喜びを語ってくれました。

受賞後、喜びの表情を見せるWoo Ming Jin監督。右には、Bront Palarae、後方中央には Asmara Abigailの姿も

ロカルノ国際映画祭にて「国際映画批評家連盟賞 (FIPRESCI Prize) 」受賞

「この賞は、多くの主要な映画祭で授与された、本当に権威ある賞です。僕たちの作品が受賞できたことは、とても畏れ多く、また光栄なことです。2010年の『THE TIGER FACTORY』以降、初めて国際的に認められた作品となり、ミンジン監督にとってまさに新たなキャリアのハイライトであり、快挙と言えます。もちろん、これはこの映画の旅の始まりに過ぎません。私たちはこの作品とともに他の映画祭を回り続けます。そして、いつの日か、この映画が日本にも上陸することを願っています。」

「今回の受賞は、次の作品へのインスピレーションとモチベーションになるでしょう。私たちにとって最大の喜びは、常に新しいものを創造するプロセスであり、この旅路で得られる喜びや充実感は、簡単に言葉できるものではありません。映画を完成させると、すぐに次の作品のことを考え、作品製作のために私たちは旅を続け、より良い映画を作り続けます。」

長年にわたり映画製作の現場を共にしてきたウー・ミンジンとエドモンド・ヨウ。二人は、間違いなく今後のマレーシア映画界を牽引することになるでしょう。今後の作品にも注目していきます。

Edmund Yeo(左)と Woo Ming Jin監督。ロカルノ国際映画祭にて

*これまで、ウー・ミンジン監督の映画作品 “WOMAN ON FIRE LOOKS FOR WATER” (2009)、”THE TIGER FACTORY” (2010) 、 “THE SECOND LIFE OF THIEVES” (2014)などの製作に携わってきたエドモンド・ヨウ。その経験が映画人としてかけがえのない経験となり、その後の自身の長編作品製作へとつながったと語るエドモンドは、2014年に長編映画監督デビュー作“RIVER OF EXPLODING DURIANS” を発表しました。

物語:

マレーシアの小さな孤島で貧しい生活の糧としてウミガメの卵を違法に売る、無国籍の難民ザハラ(アスマラ・アビゲイル役)にまつわるタイムトラベル・スリラー。ある日、島にやってきたある大学の研究者サマッド(ブロント・パラレ役)はザハラを雇い、島を案内をさせようとする。日が経つにつれ、ザハラとサマドは二枚舌と欺瞞に満ちた危険なダンスに絡め取られていく。

 All photos courtesy of Edmund Yeo (記事内すべての写真提供)

Director : Woo Ming Jin ウー・ミンジン監督
produced by Greenlight Pictures, KawanKawan Media


《参照》

映画『ムーンライト・シャドウ』エドモンド・ヨウ監督インタビュー

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