約200年の歴史を持つ東南アジア最古の英国国教会、美しい白亜のセント・ジョージ教会は、さまざまな宗教を信仰する人々が隣り合って暮らすペナン島のシンボル的な宗教施設の一つです。教会創立200周年を2年後に控え、今年、1050本のパイプから成る新しいパイプオルガンが導入されました。第二次世界大戦時、この教会は破壊され、当時のパイプオルガンは部品を盗まれたことで、声を失ってしまったのです。
教会の雰囲気に合わせた落ち着きのある木製の外装に囲われたパイプに、まっさらな白黒の鍵盤、そして足元のペダルも輝いています。ヨーロッパとは違う熱帯気候に合わせてメカニカル方式の構造を取り入れた楽器は、英国のマンダー社によって製作され、設置工事には約1年の月日がかけられました。一度はパイプオルガンの声を失った歴史ある教会の高い天井にふたたび広がった音は、神に祈りを捧げる信者たちを包み込みます。
文・ 上原亜季Aki Uehara(Mutiara Arts Production)
写真・Leonard Selva
[この記事はWAU No.14(2017年12月号)をもとに作成されています。]