地域・祭事食

森の民ルングス族の伝統料理

ボルネオ島で暮らす少数民族、ルングス族。南シナ海に突き出たクダット半島の奥地にある集落を訪ね、伝統料理を体験しました。庭に自生する野菜中心のおかずはどれも素朴ながら滋味深く、じんわり身にしみるやさしい味でした。


集落に到着し、最初に出迎えてくれたのはワンコたち。この旅のガイドである志帆さんになついているようで、尻尾をふりふり大歓迎。

ワンコのポッキーとオレオが志帆さんに飛びついて喜びを表現

緑の芝がはえている庭を取り囲むように、竹やニッパヤシで作られた家屋が4~5軒。そのなかの1軒に大きなトタン屋根が取り付けられ、その下がオープンキッチンになっています。テーブルに食材がずらっと並んでいて、村の女性たちがニコニコと出迎えてくれました。

風通しのいいオープンな共同キッチン。ここでは食材の下処理をおもに行い、火を使う調理は屋内のキッチンで行うそうだ

伝統料理は野菜中心

いただいた料理はこちら。

料理名はルングス語とマレー語が混じっていて、食材か調理法の説明になっている

右上より

・Linopot Ginazau リノポット・ギナザウ
両手を広げたぐらいの大きな葉っぱで包んだご飯。米は陸稲を使うのが伝統。

・Dinonsul Sobilikan Sagut ディノスル・ソビリカン・サグット
山菜のサラダ風。バナナの若い芽の芯と青菜を塩であえたもの。野沢菜みたいな味。

・Tinopuru Ikan Basung ティノプル・イカン・バスン
魚の煮込み。塩、レモンバジル、うこんを加えて干し魚を煮込んだもので、つゆだくで仕上げる。

・Sinamu Pazas シナム・パザス
青いパパイヤの塩漬け。マンゴーやジャックフルーツなども加えてフルーティーな酸味に。

・Sayur Manis Campur Telur サユール・マニス・チャンプル・テロール
サユールマニスというやわらかい葉と卵のにんにく炒め。都心部で人気の現代の料理。

・Kinohut Sangup キノフット・サングップ
きゅうりの漬けもの。レモンバジル、塩、干し海老、水できゅうりを数日漬け込んだもので水キムチに近い。

・Linonson Taduk リノンソン・タドゥック
長いインゲンやスズメナスをココナッツミルクで煮込んだもの。干し魚が具で、だしでもある。

皿にご飯(リノポット・ギナザウ)をのせ、おかずを合わせて食べる

マレーシア料理といえば、スパイスやハーブを使った料理を想像するかもしれませんが、ルングス族の料理はそれとはかけ離れたもの。カレーのような味やトウガラシの辛さはほぼ皆無で、野沢菜のような塩漬け野菜、干し魚のだしが効いたスープなど、どれもご飯に合うやさしい味です。炎天下でも食べやすい酸味の強い青いマンゴーの漬け物は新鮮でした。肉料理はなく、魚は保存ができる干物を活用していて、それが塩味とうま味の両方の役割になっているようです。

この集落、じつは現地で結婚されたガイドの志帆さんの親戚の家で、今回集まって下さった女性たちはみなファミリー。住まいは徒歩圏内で、普段の生活でもみんなで調理し、食事をともにすることが多いそう。とっても仲が良さそうで、食事をしながらおしゃべりも大盛り上がり。

ルングス語なのでまったく内容はわからないけど、とにかく楽しそう!

ルングス族の伝統食、4つの特徴

あらためてルングス料理の特徴を考えてみると、4つの大きな点があります。

1 庭に生えている野菜を利用する。

集落の共同敷地に、食べられる野菜が多種育っています。生姜科トゥハウ、緑色のスズメナス、ココナッツ、マンゴー、冬瓜、トウガラシ。うこん(ターメリック)もありました。

エミーさんが教えてくれているのはショウガ科のトゥハウ。若いものを収穫し、皮を取り除いて細かく輪切りにし、塩漬けの漬物で食べる、繊維質が多く、固めの食感

2 基本的な調味料は塩のみ。うま味は魚介の干物を活用

味付けは、塩(+味の素を少々)というのが基本でした。そこに、干し海老や干し魚を加えて魚介のうま味を追加。最近は醤油やオイスターソースを使うこともあるそうです。

3 漬け物のような野菜の発酵食がご飯のおとも。

未熟の果物や酸味のある葉や茎に塩をたっぷり加え、長期の保存可能なおかずがよく作られていました。いわゆる塩漬けの発酵食で、ご飯のおともとして食卓に。酸味と塩気のある味なので、暑い日でも食べやすいのです。

4 おやつには甘酒に似たご飯。

おやつとして出てきたのがTapai タパイ。写真(下記)では白いご飯に見えますが、「ラギ」とよぶ麹を混ぜて1日置いたもので、ほのかに甘く発酵しています。発酵が長くなるとお酒になるので、発酵1日程度でおやつとして食べ切ります。

包む葉っぱによって、発酵の具合が変わるという

食材の調達方法

さて、集落から車で40分ほどの距離に、週に1回開かれるタムー(市場)があります。そこで新鮮な肉、魚、野菜、また日用品の買い物をするそうです。このあたりの地域にはルングス族が多いため、ここのタムーはルングス料理で使われる食材が多く売られていました。また、集落のみんなが口をそろえて「大好き!」といっていた豚肉店も。肉を食べる頻度は多くないそうで、とくに豚肉は祝いの日の食材として重宝されているそうです。


コミュニティ・ツーリズム Monungkus

訪問した集落は、コタキナバル中心地から専用車で3時間(片道)の距離にあるイヌキラン村。ここではコミュニティ・ツーリズム「Monungkus モヌンクス」を実施しています。ツーリズムプログラムの様子など、リンクのFBページ(マレー語)をご参考まで。↓↓

https://www.facebook.com/monungkus

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