ラマダン明けのお祭り「ハリラヤ」(▽P.8)の時期、路上に屋台が現れます。店先に並んでいるのは長さ50センチほどの竹筒。これは伝統食レマンです。ココナッツミルクに浸したもち米を中に入れ、炭火でおよそ4〜5時間。上下、裏表と火にあたる位置を変えながら、じっくり炊き上げます。米を焦がすことなく全体をうまく炊くのはかなりの熟練の技。そうやって炊きあげたレマンは、ふっくら、もちもち。煮こみ料理ルンダンとのコンビは、ハリラヤに欠かせないご馳走です。
このレマン、歴史をひもとくと、ボルネオ島サラワク州で暮らす先住民族の伝統料理に関係があるようです。彼らは米だけでなく、鶏や豚を調理するときにも竹筒を使います。味つけは塩だけのシンプルな料理ですが、蒸し焼きなので肉の味が濃く、とても美味。集落の近くにある森で調達できる竹筒は、自然がもたらした調理器具なのです。
レマンにまつわるこんな思い出話もあります。リムさんの実家近くの屋台では、レマンを一年中売っていたそうです。釣好きのリムさん、船に乗りこむ前にいつもレマンを一本購入。「持ち運びが便利だし、もち米だから腹持ちもいい。船の上で食べるレマンは最高だよ!」とのこと。お祭りの祝い料理、先住民族の伝統食、そして釣のおともに。レマンの人気は、今も続いています。