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繊細なニョニャ料理の世界[WAU No.26]

家庭料理からうまれた繊細なニョニャ料理の世界

プラナカンが作る料理をニョニャ料理といいます。マレー半島に生息するハーブやスパイス、そこに中国料理で使う調味料や食材をミックスした料理で、その奥深い味は一度食べると誰もが虜に。メニューの多彩さも魅力です。

女性のたしなみとして
発展した究極の家庭料理

 ニョニャ料理は、母から娘へ、娘からその娘へ、それぞれの家で代々受け継がれてきた家庭料理です。年ごろの娘は外出を制限され、花嫁修業のひとつとして料理に取り組んだといわれ、非常に手間のかかる調理法になっています。もともと各家庭のレシピは門外不出でしたが、近年になり、プラナカン文化が根付くマラッカとペナンの郷土料理として、レストランで提供されるようになりました。

 ココナッツミルクをベースに、香り高いハーブやスパイスをたっぷり使い、タマリンドのさわやかな酸味や唐辛子の辛みを味のアクセントに。さまざまな香りや味が重なり合う奥深さがニョニャ料理の特徴です。使われる食材は多岐に渡り、タデ科のハーブであるラクサリーフ、柑橘系のこぶみかんの葉、ターメリックの根。また、中国食材の豆腐、湯葉、干し椎茸、タケノコもよく登場します。調味料は、ココナッツミルク、発酵海老、しょうゆなど多彩に組み合わせます。

 また、もともとこの地に根づいていたマレー料理との共通点が多いのも特徴で、石うすで作るサンバルやココナッツミルク入りのスイーツはマレー料理由来。普段は手食、結婚式など特別な日は箸と、食事のスタイルを使い分けていたというのもユニーク。まさに、マレー半島と中国の食文化が融合してうまれた味なのです。


【ニョニャ料理の代表的なメニュー】


Otak Otak

【オタオタ】

魚にスパイスやココナッツミルクを練りこんで蒸したもの。前菜やおやつに食べる軽食で、地方によって味が違う。ペナン版は三角形でやわらかい。

取材・文・写真(一部)/古川音 Oto Furukawa
写真・取材協力/Ahmad Syahir(コラム2)、Leonard Selva(コラム4)、日仏貿易株式会社(コラム5) デザイン/naoya


Pie Tee

【パイティー】

帽子型のカップに、さまざまな具を詰めた前菜で、見た目の可愛さNo.1。外側のパリパリ食感に、卵焼き、味つけした野菜など多彩な味覚が楽しめる。


Popiah

【ポピア】

薄く焼いた小麦粉の生地に甘辛味のソースを塗り、切り干し大根に似た野菜やキュウリ、炒り卵などを巻いたもの。野菜たっぷりのヘルシーな前菜。


Ayam PongTeh

【アヤム・ポンテ】

肉とじゃがいもの煮こみ。味つけに豆鼓、しょうゆ、玉ねぎを加えるため、味はまるで日本の肉じゃが。鶏の替わりに豚を使ったバビ・ポンテも人気。


Udang MasaK Lemak Nanas

【ウダン・マサレマ・ナナス】

海老のココナッツミルク煮こみ。唐辛子の辛み、パイナップルの甘酸っぱさ、ココナッツミルクのまろやかさが三位一体になった魅惑の味。

Chicken Rendang

【チキン・ルンダン】

スパイスとココナッツミルクで煮込んだ鶏料理。ルンダンはマレー料理としても人気で、比べると、ニョニャの方が汁気が多く、ハーブの香りが濃い。


Sambal Petai Prawn

【サンバルプタイ・プロウン】

プタイという、ジャングルに自生するそら豆に似た野菜が主役。独特の香りのあるプタイを甘辛のサンバルで香ばしく炒めたご飯のおかず。


Cincalok Omelette

【チンチャロ・オムレツ】

マラッカ特産の調味料チンチャロを具にした卵焼き。チンチャロとはオキアミを塩漬けにしたもので、食欲をそそる香りとご飯がすすむ塩気が特徴。


Nyonya Laksa

【ニョニャ・ラクサ】

地方ごとに味が違うラクサ。ニョニャ・ラクサは、海老だしをベースに、ココナッツミルクをたっぷり加えた濃厚カレー味。麺は卵麺とビーフンを半々が人気。


Nasi Lemak

【ナシレマッ】

香り豊かなご飯にサンバルを混ぜて食べる料理。マレーシア全土で人気の味で、ニョニャタイプはご飯が青と白のマーブル状という見た目に特徴がある。


Kuih Lapis

【クエ・ラピス】

日本のういろうにそっくりの甘いお菓子。ピンクや緑で色付けし、数回にわけて蒸し上げるので、しましまカラーに。マレー菓子をルーツにもつ。


Ang Ku Kuih

【アンクー・クエ】

亀の甲羅をかたどった祝い菓子。日本の大福に似ていて、中には小豆や緑豆の餡入り。めでたさを強調するため、赤や黄、緑に色付けされたものが多い。


Pineapple Tart

【パイナップルタルト】

大航海時代に渡ってきたパイナップルをジャムにしたクッキー。丸型やロール型など形は数種あり、ほのかにスパイスの香りがするジャムが特徴。


Onde Onde

【オンデオンデ】

やわらかいお団子。なかに椰子砂糖の甘いシロップが入っている。周りの白いのはココナッツの実で、香り豊か。すぐに固くなるので賞味期限は1日。

Cendol

【チェンドル】

緑豆粉からつくる緑のゼリー入りのかき氷。ココナッツミルクと椰子砂糖のシロップでまろやかな甘み。人気が広がり、今やマレーシア全土で食べられる。


日本でもニョニャ料理が楽しめる!

調理ソースで「ニョニャカレー」を作ってみよう

ショウガ科のトーチジンジャーの花など現地特有のハーブを組み合わせた「ニョニャカレーの素 Nyonya Curry Paste」460円(税別)を使えば、本場の味がご自宅でも。 「ユウキリテール・オンラインショップ」で購入可。


比較研究:
ペナンとマラッカのニョニャ料理

19~20世紀前半にイギリスの海峡植民地であったペナンとマラッカ。プラナカンがコミュニティを築いたこの2つの都市で、ニョニャ料理は発展を遂げています。

マラッカのニョニャ料理は
ココナッツミルクのリッチな味

Melaka

スパイスやハーブをたっぷり使い、ココナッツミルクでじっくり煮込んだ濃厚な料理が多数。また唐辛子ペーストのサンバルにこだわりが強く、料理に合わせて使い分けます。とくに、ふりかけタイプの干し海老入りドライサンバルは絶品。

ペナンのニョニャ料理は
さわやかな酸味がやみつきに

Penang

マレー半島の北部に位置するペナンは、立地的に近いタイ料理の影響を受けています。ライムやタマリンドの酸味をきかせて、さっぱりと仕上げるものが多く、フレッシュなハーブや生野菜を使ったサラダ「Kerabu クラブ」も人気です。


ニョニャ料理独特の
〝青いご飯〟に
〝毒抜き必須〟の木の実って?

バタフライピーの花の青はニョニャ料理である印

日本でもメジャーになりつつある青い花、バタフライピー。この花びらを煮出した天然の青色をお菓子や料理の色付けに使う。もともとお葬式のカラーであった青色が、のちに特別な日を象徴する色として根付いた、という説がある。

マングローブの沼地で育つ木の実ブア・クルア

安全に食べるために、3~7日間ほど水に漬け、くり返し水をかえて毒性を抜く必要があるブア・クルア。得も言われぬ複雑な香りがし、「少し苦みのあるチョコレート」「濃厚トリュフの風味」などと表現される、まさに珍味。


文・写真/古川音 Oto Furukawa
写真(ニョニャカレー)/新田知紗 Nitta Chisa
デザイン/村手景子 Keiko Murate

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