多民族国家であるマレーシアには様々な伝統芸能や音楽があり、それぞれに特徴的な楽器があります。今回はマレー系の伝統楽器「コンパン」を紹介します。
遠くから近づいてくる太鼓の音、近くに迫ってくると体中に音が響きわたり、胸が高鳴ります。複数人のアンサンブルで演奏される片面太鼓「コンパン(Kompang)」は、13世紀頃、アラブ商人らによって中東から現在のインドネシアやマレー半島にもたらされたと考えられています。アラーの神や預言者ムハンマドを讃えるイスラム教の詩や歌の伴奏などに使われ、マレー人らを魅了したのでしょう。
木製の浅いフレームの片側にヤギ皮でできた面が張られています。左手で太鼓を持ち、右手で面を叩きます。コンパンのアンサンブルは、3つのグループに分けられ、それぞれ違ったリズムパターンを演奏します。この3つのリズムパターンが重なり、アンサンブル全体のリズムが生まれます。
現在、コンパンは、結婚式やイスラムの宗教行事、ナショナル・デーの行進、公の催しにおけるVIPの到着時など、様々な場面で演奏され、その賑やかさで会場の空気をグッと晴れやかなものにします。
[この記事はWAU No.15(2018年3月号)から転載しています。]