風習文化

豊かな知恵と技術に満ちたマレー式産後ケア

マレーシアでは、伝統的に産前産後の母体のケアをとても大事にする文化があることをご存じですか。多種のハーブを使った伝統的な手法でケアする風習があります。マレー系の女性の多くは、産後、自宅に籠もって産褥期を過ごします。この時期をサポートする、伝統的な産後ケアについて、「TANAMERA SPA KEMAMAN」のオーナーでマレーの伝統的なマッサージのセラピストとして活動するマズリンさんと、日本でマレー式産後ケアの普及に努める、SunShineRの三好理枝さんに教えていただきました。

マレー式の産後ケアとは

マレー系では伝統的に、産後44日間を「産褥期」として、集中的に母子のケアを行います。骨盤ケア、お腹の引き締め、子宮の早期回復、母体の回復をとても大事に考えてケアをすることもマレー式産後ケアの特徴です。産後にしっかりケアしておくことで年齢を重ねても健康を維持できる、という長期的な視点を大切にしているのです。

「伝統的なマレー式産後ケアを学んだセラピストは、産後の女性一人一人に合わせて、どのようにケアをすることで母体の回復を早めることができるか熟知しています。産後何日目に全身のマッサージ、授乳のための胸のケア、子宮のマッサージをすると効果的か、体の状態、体の症状を見極めて個々人に合わせたケアを組みます。産後の過ごし方についてもアドバイスをします」とマズリンさん。

ケアのおもな内容としては、ハーブオイルを使ったボディマッサージ、ハーバルコンプレス、腹部に布のサラシまたはガードルを巻く「ラッピング(バインディング)」、多種のハーブをミックスした「ハーブ・バス」、ハーブ蒸し「タンガス」など様々な手法でケアをします。

マレーシアのハーブ蒸し「Tangas タンガス」。多種のハーブをグツグツ煮ながら、女性の身体を温め、産後の子宮の回復を促進。写真提供: SunShineR

オイルマッサージ

ハーブオイルトリートメントにより、血液循環が促進され全身が温まり、産後の疲れを癒します。また、産前産後のむくみも解消されます。

マズリンさん:「産後マッサージは普通のマッサージとは異なり、あまり力を込めてマッサージするのではなく、どちらかというとリラックス効果を大事にします。産後3日、5日、10日とマッサージをする中で、体の回復具合をよく見ていきます。産後20日後には、子宮が元の位置に戻っているか状態を確認。44日目には、最後に子宮を含めて体全体の確認をし、産後ケアの締めくくりとなります。この頃にはお母さんは回復して、エネルギーが満ちた状態になっています」。

ハーブを中心としたケア

マレー式の産後ケアでは、身体の温め、母親の母乳のためや、むくみ解消、子宮の回復のためなど、目的にあったハーブを使ってケアします。そのため、セラピストはハーブに関する豊富な知識が必要です。

使用するおもなハーブは、キンマの葉っぱ(Sirih)、生姜、ターメリック、ヤエヤマアオキの葉 (daun mengkudu)、 グアバの葉 (daun jambu batu)、パンダンリーフ (daun pandan)、香りの良いシトロネラ (serai wangni)やレモングラス、殺菌作用のあるクローブ(丁子 cenkih)など。

香りのいいハーブ「シトロネラ citronella (マレー語 Serai wangi)」写真提供: SunShineR

例えば、ターメリックなどのハーブをフェミニンウォッシュに使ったり、産後の女性に良いとされるハーブ「ツボクサ (Daun pegaga, セリ科)」をご飯と一緒に食べることもあるそうです。

また、マレーの伝統的な薬草ペースト「ピリス Pilis」は、クローブがおもな原料で、額に塗ると、頭痛を緩和したり、睡眠不足のお母さんに効果的。一方、ターメリック、生姜 (halia)、石灰(kapur)、ライム、シナモンをおもな原料とする薬草ペースト「タペル Tapel」は、 腹部を温め、子宮の回復を促進します。タペルをお腹に塗って「サラシ」を巻くことで、お腹を引き締め、子宮のサイズがより早く元の状態に戻るといいます。

「これらのハーブを使うのは、ヒーリング(癒し)や、身体の回復を早める効果だけではなく、産後うつ(PND: Postnatal Depression)を予防するためでもあります。ただ、マレーシアでも都会ではフレッシュハーブを手に入れることは難しいため『TANAMERA』では、現代的な女性たちが使いやすいよういくつかのハーブをミックスしたオイルを作っています」とマズリンさん。

マレー式産後ケアを日本で

現在、マレー式トリートメントセラピスト®として日本で活動を広げる女性がいます。SunShineRの三好理枝さんは、「マレーシアは古くから、子供は宝であると考えられています。その宝を身ごもった、産後の女性をもっと大切にする文化が日本にも根付いて欲しい」との願いを胸にマレー式訪問産後ケアの普及に努めています。

産後うつを抱える方がとても多い、現代の日本。

「その理由は産後に体が回復できていないまま、誰にも頼ることができずに一人で小さな命を守ることに必死になりすぎて、先の未来に光が見えなくなってしまうからです。産後に体がしっかり回復していれば、心も元気に我が子に笑顔で接することができると思います」と語ります。

理枝さん自身、一人目の出産後に産後うつを経験。「子どもが泣き止まないたびに、こんなお母さんではダメなんだ、と自分を責める日々でした。体が思うように動かず痛い。心も痛い。誰にも言えないし、誰に伝えていいのかわからない。そんな毎日でした」と振り返ります。

そして、シンガポールにて二人目を出産した際にマレー式の産後ケアと出会います。

「一人目の時とはちがう体と心の軽さと、明るく笑顔で子どもに接することができている自分に感動しました。元気に育児をして自分らしく働くために、まずは産後にしっかり休むだけではなく、体のケアをすることが大切です。そして何よりも、産後ケアをパートナーが予約するということが日本の男性にも根付いていけば、産後うつも、産後のパートナシップもさらに良くなるのではないかと確信しています」と語ってくれました。

産後すぐに受けたかったマレー式トリートメント!

今回、SunShineR理枝さんによるマレー式トリートメントを体験させていただきました。筆者自身は出産後すでに7年が経過しており、産後とは違った家事、育児と仕事による睡眠不足などからくる辛い体の状態での体験となりました。冷え切ってカチコチ、悲鳴をあげている状態の体が少しでも温まることを期待してジンジャーベースのオイルを選び、トリートメント開始。足、ふくらはぎから太ももにかけて、腰、背中、頭までオイルトリートメントを受けることで全身に血が巡り、じわじわと体が温まり、体が和らいでいくのを実感できました。

産後は、泣きじゃくる新生児にあたふたし、一日中授乳、オムツ替え、隙間時間に自分の食事。そんな生活に追われて、自分自身の体のメンテナンスなど思いもつきませんでした。でも、本当は産後の母体は全身に痛みがあったり、疲労が溜まっています。実際に体験してみて、この産後ケアが日本でもさらに広がり、身近になってほしいと感じました。

【info】

TANAMERA SPA KEMAMAN
SNS “tanameraspa” のアカウントにてさまざまな施術の様子が見られます。  

Instagram: https://www.instagram.com/tanameraspa/ 
Facebook: https://www.facebook.com/tanamerakemaman/ 

伝統的なマレー式産後骨盤ケア – SunShineR
現在、公式マレー式トリートメントセラピスト®が日本各地で訪問、自宅での施術、産後ケアの活動を広げています。産後ケアは、全国出張対応。また、マレー式トリートメントセラピスト®養成講座を開催。養成講座は、広島、福岡、大阪、東京、沖縄で開催予定。施術の内容や講座に関する情報は、ウェブサイトをご覧ください。

SunShineR ウェブサイト: https://sunshiner.jp/ 
Instagram: https://www.instagram.com/sunshinerien/ 

マレーシアの「TANAMERA SPA KEMAMAN」での研修。マズリンさん(中央)、理枝さん(右から2番目)、現地のスタッフと共に。テーブルには様々なハーブが並べられています。

「TANAMERA SPA KEMAMAN」のオーナー、マズリンさんとSunShineR 三好理枝さん。マレーシア、トレンガヌ州ケママンにて

11月2日(土)、3日(日)に開催される国内最大のマレーシアイベント「マレーシアフェア 2024東京」にて、マレー伝統マッサージを体験できます!

【会場】豊洲公園&アーバンドックららぽーと豊洲

【ブース】アクティビティ・ブース No.4 マレー伝統マッサージ
物販・展示ブース(一般ブース)No. 3-1 有限会社 サンシャインアール 

【デジタルパンフレット】 https://malaysiafair.jp/MalaysiaFair2024_pamphlet_jp.pdf 

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