デザイナー、ニサの挑戦
バティックとは、ろうけつ染めのこと。ろうで絵を描いた布を染め、美しい柄を浮かび上がらせます。カラフルで原色のバティックが多いなか、パステル調のモダンな色合いが注目を集めている「ニサカパス」。伝統工芸を通して、豊かなライフスタイルを表現するブランドに注目します。
桜色、藤色、黄金色。こんな和の色表現がぴったりのナチュラルカラー。絵柄は、花や植物、貝殻など自然をモチーフにしたもので、生地全体にかわいらしく散りばめられています。デザイナーのニサさんが2016年に立ち上げたブランド「Nysakapas ニサカパス」。マレー半島北東、トレンガヌ州の海辺の町にある工房でひとつひとつ手作りされています。
クアラルンプール育ちのニサさんが、バティックの世界に入ったきっかけは、親友の故郷であるトレンガヌ州を訪れたとき。フレンドリーな地元の人々が日常的に身に着けているバティックに強く惹かれた、といいます。「年齢や性別を問わず、彼らの生活の一部になっているバティックについて、もっと知りたいと思いました」とニサさん。バティック職人から技を学び、試行錯誤を何度もくり返してたどり着いたオリジナルデザインは、ブロック(上写真4枚参照)で絵を描く手法。これまでに35の作品をリリース。制作したブロックは40以上にのぼります。
最近では、マンジャカニの実やマンゴーの葉を使った天然染料のバティック作りに挑戦。「自然という私たちの財産を守りながら伝統をつないでいきたい。小さな歩みでも、続けていれば大きな流れになると信じています」とニサさんは語ります。
環境にも人にもやさしい
天然染料のバティック
身近にある植物を使い、自然と共存したバティック制作に取り組んでいる。納得できる色を出すには約半年もの時間がかかるが、「想像していない色を発見するのも楽しみのひとつ」とニサさん。
Brand Concept
ニサカパスの世界観
ブランドコンセプトは“Kampung lifestyle with a modern approach”。現代の慌ただしい生活から距離を置き、田舎暮らしのようなリラックスしたライフスタイルを応援する物づくり。温かみのある色合いとトレンドを意識したデザイン性も大事にしている。ブランドを代表するデザインは、ロゴ(左)になっている花柄。ブランド名の「ニサカパス」は、名前のニサに、やわらかな綿を意味する「カパス」を合体させたもの。
Haniza Binti Hisham
ハニザ・ビンティ・ヒシャム
ニサカパス代表、バティック・デザイナー。愛称はニサ。マレーシア・クアラルンプール出身。幼いころからアートに囲まれた生活を送り、建築関連の大手会社に勤務。デザイナーとして自分を表現したいと考え、バティックの道へ。「子ども達が寝たあと、真夜中にろうで絵を描くのが好きです。温めたろうの香りに癒されます」と語る。
Shop INFO
ショップ情報
トレンガヌ州の豊かな緑に囲まれた工房では、バティック体験クラスを開催するなど、バティックの良さを伝える活動も積極的に行う。WebサイトやインスタLiveで制作工程や天然染色の様子を発信。
NYSAKAPAS BATIK STUDIO
2556, Kampung Serada, 20050, Kuala Terengganu,Malaysia
https://nysakapasonline.com/
Instagram: nysakapas
取材・文/古川音 Oto Furukawa
写真提供/Nysakapas 取材協力/Kyoko Kugai