ファッション

クロスカルチャー – 民族衣装バジュクロンと浴衣

お互いの民族衣装の生地で制作した
Traditional Clothes, Baju Kurung x Yukata

海を越えて、文化が交差。マレーシアと日本の民族衣装をお互いの国の生地で作りました。これは、2017年に挑戦したWAUリニューアルのためのクラウドファンディングの特典として、Hati Malaysiaが独自に企画、制作したもの。企画に賛同し、仕立てを担当してくれた職人の制作現場をたずねました。


「バティック」とは

溶かしたろう(ワックス)で模様を描き、染色した生地のこと。生地全体にひろがるのびやかな柄が特徴で、シルクのバティック生地は、マレーシア伝統の象徴として、国家セレモニーの衣装にも使われている。


浴衣とは

日本人女性の民族衣装である着物のひとつ。上下つなぎの衣装で、胴回りを紐と帯で結びます。木綿の生地が多く、着物と違って中に肌襦袢(はだじゅばん)を着ないので、もともとは湯上りに家で着ていたラフな衣装でした。現代では夏祭りや盆踊りなど夏のお出かけでよく着られています。

 今回、浴衣のために用意した生地は、マラッカの衣装店「蘭香」とデパート「マイディン」で購入。紫は女性用、緑は男性用のサロン(腰巻布)として売られていたものを各3枚用意しました。

 浴衣は、仮縫いなどの工程がなく、すべて手縫いで行います。また「浴衣は長い一枚の反物から仕立てるのですが、バティックは3枚をつなぎ合わせたので、柄合わせに神経をつかいました」と仕立て人の池田さん。マレーシアの生地らしい南国の花やくり返しの文様が、浴衣をカラフルに彩っています。

ミシンは使わず、すべて手縫いのため、製作期間は5日間にも及んだ。布の裁断とヘラでの印つけはいちばん神経をつかう部分。数ミリでも違っていると、全体の構成がくるってしまう。できあがった浴衣はクラウドファンディング支援者の伊能さんに贈呈!

仕立て人は池田千織(Chiori Ikeda)さん。和裁の専門学校卒業後、7年間の着物店勤務を経て、現在は着付師と和裁士として活動中。


浴衣生地とは

木綿糸、麻糸、絹糸など、使用する糸の種類や織り方で、生地の種類は多様。また、職人が手で染料を注いでいく「ちゅうせん」とよばれるものなど色の染め方も様々。なかにはバティックと同じろうけつ染めの生地もある。


バジュクロンとは

マレーシア人の女性、なかでもマレー系女性の民族衣装のひとつ。上着とスカートが分かれたツーピースで、手首までの長袖、足くるぶしまでのロングスカートというように、からだ全体を覆うように仕立てられています。

 今回、バジュクロンのために用意した生地は、日本橋の呉服店「辻和」で購入。女性用の浴衣生地で、幅は約40センチ×長さは約12メートルの「反物(たんもの)」で用意しました。

 仕立て歴44年のイーメイさんは「いつも1メートル幅の生地で仕立てていますが、今回の日本の生地はその3分の1ぐらいしか幅がありません。これは一般的な女性の肩幅とほぼ同じサイズ。後ろみごろを1枚で仕立てるバジュクロンにとっては、ギリギリの幅でした」と語ってくれました。柄の見せ方に工夫をこらし、浴衣の生地で作ったとは思えないほど、南国マレーシアらしい華やかなバジュクロンに仕上がっています。

バジュクロンは、マレーシアの地方ごとにスタイルがあり、今回仕立てたのは、横のカットが直線のジョホールタイプ。また、柄の出し方が職人の腕の見せどころで、胸元とすそに印象的に配置。2人の職人が、柄合わせの調整から縫製まで、2日間かけて作成した。

仕立て人はイーメイ(Ee May)さん。マレーシア・ジョホールにて、バジュクロンやバジュクバヤなど女性の衣装を44年間作り続けている。今回できあがったバジュクロンはお娘さん、セフリンさんが試着!


[この記事はWAU No.15(2018年3月号)から転載しています。]

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