映画FILM

スマトラサイ《タム》の死を未来につなぐ

泥浴びが大好きだったタム。スマトラサイは、体に付着している汚れや寄生虫を落とすために泥浴びをします。

Tam, the last male Sumatran rhino in Malaysia

生物多様性の宝庫、ボルネオ島の熱帯雨林には、1万5千種以上の植物、200種類を超える哺乳類、700種近い野鳥、そして多種多様な昆虫が生息しています。しかし、スマトラサイ、オランウータン、ボルネオ象などが絶滅の危機に瀕しているのも事実です。今年5月、ボルネオ島に生息するスマトラサイの最後の雄「タム」が死に、雌の「イマン」がマレーシア最後の1頭となりました。 「大きな野生動物を間近で見たことがなかった私は、初めてタムに出会ったとき少し怯えました。でも、3年間の撮影を通して私はタムのことをより深く知りました。彼がとても優しい性格だということも。私は彼に慣れ、撮影のときにはタムが好きな森の葉っぱを食べさせることもできるようになったのです。実は、スマトラサイにも食の好み、癖、行動など、それぞれに違った個性があります。タムはマンゴーを好み、1日何時間もヌタ場で泥浴びするのが大好きでした。タムを毎日24時間ケアしていた保護団体のスタッフも彼の死をとても悲しんでいます。マレーシア最後のスマトラサイのオスを失ったことがボルネオの自然環境に与える計り知れない影響が明らかになるのは、これから何十年も先のことです。タムの死が私たちの未来へのレッスンとなり、手遅れになる前に私たちが行動を起こすきっかけとなることを願っています」― リディア・ルボン (映画プロデューサー)


『Operation Sumatran Rhino』 (2016年)

(邦題:スマトラサイの住む森へ)

リディア・ルボン(Lydia Lubon)さんがプロデューサーを務めた、ボルネオ島のスマトラサイを追ったドキュメンタリー『Operation Sumatran Rhino』(2016年)は、大自然・野生動物ドキュメンタリー番組ナショナルジオグラフィック・ワイルドに取り上げられた初のマレーシア作品です。

文/上原亜季 Aki Uehara 写真/Chris Annadorai 協力/Lydia Lubon

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です