アート

ボルネオ島サバ州に伝わる稲の精霊

“BAMBARAYON”, the Rice Spirit in Sabah

BAMBARAYON
中央にはサバ州の先住民族が大切にする稲の精霊バンバラヨン。右側の穂先には、田植えから米の収穫までの様子、左側には、伝統舞踊や伝統楽器を演奏する様子などが描かれている

 生命力あふれる稲とその精霊「バンバラヨン」。人々の営みをアートに描き出す木版画作家、メメト・ジェックさんが、サバ州の先住民族、カダザン・ドゥスンに伝わる神話を教えてくれました。
 神「キノロヒンガン」とその妻「スミヌンドゥ」には「フミノドゥン」という娘がいました。ある年、飢餓に見舞われた人々を救うため、キノロヒンガンは最愛の娘を犠牲にします。身を神に捧げたフミノドゥンの身体は大地に撒かれ、現在、カダザン・ドゥスン族の主食となっている米をはじめ多様な植物の“種”となりました。フミノドゥンの精神は米に宿り、精霊「バンバラヨン」となったと信じられています。
 この神話をもとに、カダザン・ドゥスンの人々は「カアマタン(収穫祭)」の儀式を始めました。カアマタンの祭りは、人々のために娘を犠牲にした創造主(キノロヒンガン)への感謝と敬意を表すと同時に、豊穣と繁栄を願うものです。
 サバ州の芸術家、ミュージシャン、社会活動家などから成るアーティスト集団「Pangrok Sulap」のメンバーであるメメトさん。アート作品を通じて農村コミュニティに力を与えるとともに、女性の社会的地位向上も訴えます。「フミノドゥンは、女性の勇気の象徴であり、彼女の犠牲は時代を超えて敬われています」と語ってくれました。

Kaamatan_3
作品『Kaamatan』。右上には、鳥が羽を広げた様子をモチーフにした「スマザウダンス」。左側には、バンブーダンスや伝統楽器「クリンタンガン」演奏の様子が描かれている
MY Tasyareena Artwork
フランス、パリでのグループ展のために制作された作品『The Dance』。エッフェル塔を背景に、サバの民族衣装に身を包んだ女性たちがパリの人々とダンスで交流している

SUMANDAK ZINE 2022

Profile

Tasyareena AKA Memeto Jeck
タシャリーナ a.k.a. メメト・ジェック

Pangrok Sulap」のメンバー。クアラルンプールでの東南アジア新興女性アーティスト展、韓国・釜山での現代版画展(ともに2022年)に参加。またボルネオ島のアーティストの作品やエッセイを集めた冊子『SUMANDAK ZINE 2022』を制作するなど活動の幅を広げている。

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