“BAMBARAYON”, the Rice Spirit in Sabah
生命力あふれる稲とその精霊「バンバラヨン」。人々の営みをアートに描き出す木版画作家、メメト・ジェックさんが、サバ州の先住民族、カダザン・ドゥスンに伝わる神話を教えてくれました。
神「キノロヒンガン」とその妻「スミヌンドゥ」には「フミノドゥン」という娘がいました。ある年、飢餓に見舞われた人々を救うため、キノロヒンガンは最愛の娘を犠牲にします。身を神に捧げたフミノドゥンの身体は大地に撒かれ、現在、カダザン・ドゥスン族の主食となっている米をはじめ多様な植物の“種”となりました。フミノドゥンの精神は米に宿り、精霊「バンバラヨン」となったと信じられています。
この神話をもとに、カダザン・ドゥスンの人々は「カアマタン(収穫祭)」の儀式を始めました。カアマタンの祭りは、人々のために娘を犠牲にした創造主(キノロヒンガン)への感謝と敬意を表すと同時に、豊穣と繁栄を願うものです。
サバ州の芸術家、ミュージシャン、社会活動家などから成るアーティスト集団「Pangrok Sulap」のメンバーであるメメトさん。アート作品を通じて農村コミュニティに力を与えるとともに、女性の社会的地位向上も訴えます。「フミノドゥンは、女性の勇気の象徴であり、彼女の犠牲は時代を超えて敬われています」と語ってくれました。
Profile
Tasyareena AKA Memeto Jeck
タシャリーナ a.k.a. メメト・ジェック
「Pangrok Sulap」のメンバー。クアラルンプールでの東南アジア新興女性アーティスト展、韓国・釜山での現代版画展(ともに2022年)に参加。またボルネオ島のアーティストの作品やエッセイを集めた冊子『SUMANDAK ZINE 2022』を制作するなど活動の幅を広げている。