Alena Murang, the Sape songstress, releases New Music Video “Put Burui”
サラワク州の先住民族クラビットにルーツをもつサペ奏者、アレナ・ムランが8月9日の「世界の先住民の国際デー」にあわせて新しいミュージックビデオ「Put Burui(プッ・ブルイ)」を発表。これまでも祖先から伝えられた歌や音楽をベースに、現代的な感覚で曲をアレンジし、伝統的な衣装やアクセサリーも今の時代にあわせてスタイリッシュに世界に向けて発信してきた彼女。本作では、より大地に根ざし、自然への愛をみずみずしく表現しています。天然素材を用いた衣装やアクセサリーも見どころです。
母なる大地から生まれた芸術
「Put Burui」はサラワクの先住民族クニャ(Kenyah)の伝統的な曲で、アレナさんはこの映像にとても直接的なメッセージを込めています。木々が生い茂るジャングルを舞台に撮影された今回のミュージックビデオの根底にあるのは、2つのコンセプト。
「まずは、私たちダヤク(*1)の伝統文化や音楽、アートがいかに自然(Nature)から生まれているかを表現したかったのです。熱帯雨林と川がなければ、サペの音楽は生まれなかったと思います。私たちの歌も、物語も生まれなかったでしょうし、全く違うものになっていたと思います。なぜなら、私たちアーティストは、周りの環境から大きな影響を受けるからです。私たちの祖先は、熱帯雨林の中に暮らしていたので、自然が彼らに創造性を与えたのです。それを表現したかった」とアレナさん。
「もう一つは、母なる自然(Mother Nature)に対する愛。この大自然がいかに美しいか、私たちが必要としているものは全てこの自然の中にある、ということを伝えたかった。」
一本の木をくり抜いて作られる、サラワクの伝統弦楽器サペを奏でるアレナさんが語る「全て」という言葉に込められた想いは、衣装にも反映されています。イバン族の伝統的織物で草木染めの糸で織った布”プアクンブ”を衣装として身にまとうアレナさんは鮮烈な印象を与えます。ダンサーたちの衣装には、天然素材を天然染めしたタイの手織り布を使用。アレナさんが着用しているアクセサリーには、植物の種を素材に使っています。楽器、衣装、そして、音楽、その全てが母なる自然から生まれているのです。
また、映像の中に登場するサイチョウの踊りに使用している手の装飾にも注目です。伝統的なサイチョウの踊りは、実際の羽を用いた大きな装飾が印象的な踊りです。でも、サステイナブルな観点から「今回は、装飾をシダの葉に代えています。何年も私の頭の中で思い描いていたことを形にしてみました」と語ってくれました。
先祖から受け継がれた音楽、母なる大地、川、森への想いが存分に込められた作品です。
*1:サラワクの先住民族ダヤクを含む、サラワクの多様な民族については、こちらの記事を参照:
アレナ・ムランさんのインタビュー記事
アレナ・ムランさんのプロフィール: