ボルネオ島のサバ州、山間で暮らす少数民族が集まるタムー(市場)があります。週に1度開かれる青空市場で、生鮮食品から嗜好品、衣料品まで販売。スーパーなどが近くにない地域で暮らす人々にとって、この市場は生活になくてはならない存在です。
マレーシアには、地元の人が集う市場が各地にあります。野菜、肉、魚などの生鮮食品を中心に、菓子や調味料、乾物までそろい、なかには衣料品や玩具、食堂をそろえた規模の大きなものも。訪れるお客さんの需要に合わせて、市場で販売されている商品の種類はさまざまで、市場をみると、その地域の特色やどんな人が暮らしているのかを肌で感じることができます。
今回訪問したのは、ボルネオ島のサバ州。州都コタキナバルから2時間ほど車で北上したエリア、マトンゴンにあるローカル市場です。
このタムーに訪れる人のほとんどが、近くの山間に暮らす少数民族のルングス族。彼らの食文化や生活に添った品が並びます。それらは、都心部ではあまり見かけないレア食材のオンパレードです。
たとえば、川と海が交わる汽水域のマングローブで生息する貝。大人の手のひらほどのビッグサイズなもの。
野菜は、カボチャ、茄子、生姜、オクラ、ササゲなど日本でもなじみのあるものから、赤ほうれん草、マニスの葉、ウラムラジャなど独特なもの。野生種のマンゴー、バンバンガンや若いジャックフルーツなど、ご飯のおともに使われる野菜も売られていました。
また、人気を集めていたのは、豚肉コーナー。ルングス族にとって豚肉はごちそうだそうで、部位ごとにきれいに処理されて販売。
嗜好品として人気のシレーやかみたばこ、まきたばこの店も。
おもしろかったのが、技術支援のコーナーがあったこと。ペニャランとよぶお菓子作りが体験でき、料理を教わって自立を促す、というチームの出店がありました。実際にやってみたところ、おたま1杯ほどの生地を高温の油に落とすと、真ん中がふわっとふくらみます。この形がUFO型になるそうで、このおかしの特徴。どうも生地をひと晩ほど置くことで発酵しているそう。もちもちの甘い揚げパンでした。
小麦粉と米粉。砂糖、ココナッツミルク、パンダンで作る菓子「クエ・ピンジャラム(kuih pinjaram)」。
ほかに伝統工芸であるビーズアクセサリーや食事コーナーも充実。
毎週1回開かれる祭りのような場所。住民の人もこの日を心待ちにしているようで、店の人と楽しそうに談笑し、子どもちゃんがはしゃでいる姿があちこちに。こういう場所が人々をつないでいるように感じます。