織や刺繍など、伝統布で表現されたモチーフやデザイン。それらをデジタル化し、デザインの特徴や模様はそのままに、現代のファッションに適したプリント布を生産している「チャンティーク・ボルネオ」に注目。
訪れたのは、サバ州にある「Chanteek Borneoチャンティーク・ボルネオ」。カラフルなテキスタイルが店内に所せましと並んでいます。テキスタイルのデザインはすべて、ボルネオ島北部に暮らす先住民の伝統的なモチーフをデジタルプリントしたもの。
2011年に設立したチャンティーク・ボルネオは、サバ州の文化的なアイデンティティ継承のために、伝統衣装の保存を目的に活動をスタート。2014年に、民族の伝統衣装を身につけたミニチュア人形で、それぞれの風習や文化を表現したミュージアムをオープン。観光客にも人気のスポットでした。
そして、2023年に訪れてみると、人形の展示はなく、さまざまなデザインの布のコレクション。先住民の伝統衣装である織物や刺繍布に描かれていたモチーフやデザインをデジタル化し、現代の日常に適した生地にプリントしたものです。これらの生地は、本来の伝統布に比べると、技術が必要なく、作る手間が少ないため、はるかに安価で、日常のファッションやおみやげ品などに加工され、流通しています。
モチーフには、さまざまな意味が含まれています。たとえばルングス族のモチーフは、やもり、花、蛇などが表現。文字のないルングス族にとって、それらのモチーフは文字のかわりにもなっていたようです。
話しはすこし変わりますが、そういえば、と思い出したことがあります。
ルングス族の旦那さんをもつ日本人ガイドの志帆さん。マレー語はペラペラなのですが、ルングス語は「学ぼうとしてるけれど、とても難しんです」と教えてくれました。文法や単語を覚えられないというより、言語の世界観が違うので、たとえば、このマレー語はこのルングス語が対応とはなっていないことが多い、とのこと。もちろんテキストもありません。ルングス語は、学ぶのではなく、自然に身に着くもの、のようです。
そういう意味でも、モチーフをデジタル化し、後世につないでいくのは、とても大事なこと。伝統布そのものの刺繍や織の技継承のためにも、彼らの支援が必要と考えるチャンティーク・ボルネオは、デザインを正確に再現したプリント生地制作のために、各民族の文化調査も行っています。
コタキナバル中心地から、約30分程度の場所に実店舗があります。
生地好きの方、またおみやげ向きの雑貨もあるので、ぜひ足を運んでみて下さい。
※記事の写真は訪問時(2023年6月)に撮影したもので、2023年11月に移転した新店舗とは異なります。
Chanteek Borneo
https://www.chanteekborneo.shop/