マレーシア、インドネシア、インドなどで生産されている生地「バティック(Batik)」。ろう(ワックス)で模様を描き、細やかに染色。生地全体にのびやかに広がる曲線美も魅力です。洋服やインテリアなどで幅広く活用されている伝統的な布地、バティックの世界を紹介します。
マレーシアバティックの歴史
16世紀ごろにジャワから渡ってきたバティック。19世紀初頭には広く知られるようになりましたが、そのころは自国で生産することはなく、ジャワ北部の職人から購入していたようです。その後、腰に巻くサロンなどでバティックを身に着けるようになったマレーシア人は、自国での生産をスタート。1930年代にはマレー半島東海岸のクランタン州やトレンガヌ州で盛んに作られるようになりました。20世紀後半ごろから、バティックは工芸品としてだけでなく、芸術品としての地位も確立。空間を彩るインテリアやアクセサリーとしても活用されるようになっています。 さらに現在では、マレーシアの伝統やアイデンティティを象徴する存在として、国家セレモニーの衣装から観光客用の土産品まで、様々な使い方がされています。なお、バティックという言葉の語源は、ジャワ語の「amba」(描く)、 マレー語のtitik(点をうつ)からきています。
柄と色
伝統的な柄は、目に見える写実的な柄が中心でした。それが今ではさまざまに進化を遂げ、多民族国家マレーシアらしいデザインが花開いています。たとえば、イスラム教のモチーフである繰りかえしの文様、ヒンズー教の神々を描いたもの、中国で人気のドラゴン、不死鳥などのモチーフです。もっとも一般的なデザインは、マレーシアの土地で生き生きと咲く南国植物。ハイビスカス、オーキッド、プルメリアなどになります。 柄を描く方法には2つのスタイルがあります。ひとつは、職人がフリーハンドで自由に描く手描き。世界でひとつしかない柄です。もうひとつは、木製や銅製の型をスタンプのように押していくブロックプリンティング。細かなパターンが生地全体に広がります。 伝統的な染色には、果物の皮、木の皮、木の根、葉などを原料とする天然の染料が使われていました。そのため、黄色、赤、ブルー、茶色の色合いのバティックが多かったようです。
カラフルなバティック雑貨
マレーシアで見つけたバティックを使った可愛いアイテム。洋服だけでなく、普段使いできる雑貨にもバティックが大活躍!
参考文献 :
『Malaysian Batik – Yayasan Budi Penyayang Malaysia』
Peter Shotwell 著/Tuttle Publishing 出版
『Kulit Manis – A Taste Of Terengganu’s Heritage』
Yeoh Jin Leng 著/My Viscom Editions Sdn Bhd 出版
文・撮影 Oto Furukawa (Malaysia Food Net)
[この記事はWAU No.11(2017年3月号)の記事から転載しています。]