Herbs and Spices that Enhance and Enrich the Malaysian Recipes
マレーシア料理は、ひとことで表現できない複雑な味がします。甘みのなかに刺激的な辛さがあったり、かむと香ばしさが口中に広がったり。その味を作っているのが、多種のハーブやスパイスです。たとえば、マラッカ名物の「アッサムペダス」は、生姜の一種である「ブンガ・カンタン」の花、タデ科の「ダウンクスン」など、香りの強いハーブを加えてよく煮込みます。これらの香りは、具材の魚から出るだしの風味を引き立て、奥深いうま味のように口のなかに広がります。また、スパイスの炊き込みご飯「ビリヤニ」は、カルダモン、クミン、八角、クローブ、ミントリーフなどに、アジア特有の枝豆のような香りのするハーブ、パンダンリーフを加えるのがマレーシア流です。
ほかの東南アジアの国に比べて、とくにインド料理の影響が強いマレーシア料理は、乾燥系のスパイスを好んで使います。たとえば、マレーシア全土でポピュラーな麺料理「ラクサ」。地域によってさまざまな味がありますが、注目したいのはボルネオ島の「サラワク・ラクサ」。コリアンダー、フェンネル、ナツメグ、カルダモン、チリなど20種近い乾燥スパイスを調合したスープが特徴で、香り、うま味、刺激といったさまざまな味覚が私たちを虜にします。マレーシア料理には、スパイスとハーブが欠かせません。その魅惑の味は、一度食べると忘れられないのです。
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文・写真 (小)/古川 音 Oto Furukawa