Colorful Elegance of Peranakan: The Beauty of Nyonya’s Handworks
直径わずか1ミリほどの小さなビーズで描かれた花々をあしらったサンダル。それは数世紀にわたる歴史の片鱗を凝縮させた芸術品です。
15世紀、東西交易の拠点として繁栄したマラッカ王国は、中国、中東、西洋諸国から多様な人々が集まる国際色豊かな都市でした。異国からやってきた男性と地元の女性が結婚し、生まれた混血の子孫は「プラナカン」と呼ばれ、多様な国の文化を受け継いだコミュニティが生まれました。なかでも、主に中国福建省からマレー半島に渡ってきて現地化した「華人系プラナカン(Peranakan Cina)」の男性はババ、女性はニョニャと呼ばれ、中国、マレー、西洋の文化が融合された優美な文化を築きました。19世紀、マラッカ、ペナン、シンガポールが「海峡植民地」となると、「ストレイツ・チャイニーズ(海峡華人)」を自称した彼らは、裕福な商人や実業家として栄華を極めます。その生活様式は、今に残るプラナカン様式の建築や豪華な調度品からも伝わってきます。
年ごろのニョニャが嫁入り修行として仕込まれた裁縫やビーズ刺繍など、美しい手仕事は、上品で優美な「雅」な世界。ペナン島のババ・ニョニャ一家に生まれ、この独特な文化遺産を愛し、守るため、ビーズ刺繍職人となったケニー・ローさん。質が良く、輝きが持続する日本製のガラスビーズを用いて仕上げる靴は、デザインと色のコンビネーションが魅力です。
写真/Oh Chin Eng(オー・チンエン)
写真愛好家。多様な文化遺産を誇るペナン島ジョージタウン生まれ。近年、人々の生活様式や街の雰囲気に変化を感じている。常にカメラを持ち歩き、数年後には歴史となる、失われゆく記憶の断片を記録中
https://www.instagram.com/ohchineng/
文/上原亜季 Aki Uehara