地域・祭事食

日馬文化比較:おせちとイーサン

日本の正月料理、おせち。マレーシアやシンガポール独特の中国正月の料理、イーサン。どちらも正月の時期だけ登場する特別料理で、家族や親しい人とともに食べるハレの日の料理です。味や作法はそれぞれ違っていても、みんなで新しい年を幸せに過ごせるように、という願いが込められています。


日本の一年の食事は、家族で おせちを囲むことから始まる

暦のうえで季節の節目となる日を「節句」といい、一年の最初に訪れる節句が正月。その日に食べる祝い料理を「おせち(お節)」と呼びます。

 おせちの代表料理は「黒豆」「数の子」「えび」「なます」「きんとん」など。これらは幸せを重ねるという願いがこめられた重箱につめられ食卓に並びます。料理にもそれぞれ意味があり、たとえば「黒豆」にはまめ(真面目)に働けるように。「数の子」には子孫繁栄。「海老」は腰が曲がるまで健康で。「なます」は人参と大根の色がおめでたい紅白を表し、「きんとん」の黄色は富の象徴です。

 おせちは一月一日の朝食に始まり、それから二日、三日と同じ料理を食べ続けるのが伝統的な習わしです。昔は正月に火気(調理)を避ける家が多かったこと、スーパーが正月休暇で開いていなかったこと、年末に忙しかった主婦をいたわるため、などさまざまな理由がありますが、年中無休のコンビニが普及した現代ではこの文化は消えつつあります。また、昔は家で作っていましたが、最近は店で買う家庭も多くなりました。さらに、洋風おせちやベジタリアンおせちなど伝統料理にとらわれない新しいおせちも登場しています。


おせちはどこで 買えるの?

年末になると、スーパーで「きんとん」「かまぼこ」などが小分けになって販売。また専門店やレストランでは、おせち一式が重箱に入ったものが購入でき、値段は2万円程度(4人分〜)。コンビニにはひとり分のおせちもある。


 ひとつの大皿を大勢で囲み、ワイワイにぎやかに食べるイーサン。料理そのものは中国南部にルーツがあるようですが、中国正月の祝い料理として確立したのは、20世紀前半のマレー半島南部といわれています。

 イーサンは漢字にすると「魚生」。生の魚といえば刺身のことで、刺身と生野菜を中心にいろんな食材を混ぜて食べるサラダのような料理です。中国系の人は言葉の発音で縁起を担ぐ習慣があり、魚の発音のYuは「繁栄」「気前の良さ」を表す漢字、生のSangは「財」「長生き」「出発」という縁起のいい漢字と結びついています。そのほかタレに入っている油はキラキラと光るので「富の循環」、調味料の胡椒や五香粉には「運を引きよせる」という意味、緑に色付けするのは「若さ」の象徴です。

 そして大事なのはその食べ方。箸を手に持ってみんなで立ち上がり、スタート! のかけ声とともにテーブルの中央に置かれたイーサンをみんなでいっせいに混ぜます(上写真)。それと同時に、自分の願い事を声に出して宣言。新年の抱負や夢をみんなに語り、共有するのです。イーサンは味わう料理というより、一年の福を願う儀式に近いものです。


イーサンはどこで 食べられるの?

中国正月の数日前から期間中(2週間)、中国系の店で食べられる。最近は刺身つながりなのか和食店でもメニュー化。またこの時期、スーパーでは刺身以外の食材がセットになったものが販売されており、家でもイーサンが楽しめる。


イーサンで 「福」を呼ぶ

マレーシアの中国正月の宴はイーサンからスタートする。みんなで混ぜ、みんなで願い事を口に出し、みんなで食べるのが大事。

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