来る10月25日から11月3日まで開催される東京国際映画祭でプレミア上映される、『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』。試写会のレポートです。
『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』は、東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターによる「アジアで共に生きる」というテーマのもとに製作された、3つの映画からなるオムニバス映画です。(3作で118分)
フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、日本からは行定勲監督、そしてカンボジアのソト・クォーリーカー監督による、アジアそれぞれの国と日本にまつわる様々なバックグラウンドを盛り込んだ見ごたえのある作品群。撮影も「アジアと日本の共同制作」意識し、各国言語が入り混じった撮影風景。エンドクレジットの際にメイキングとして紹介されている。
以下、各作品の簡単なご紹介です。
チケットはこちらより10月20日から発売開始
http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=191
◆「SHINIUMA(Dead Horse)」フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督
不法滞在者の老人、マーシャルが主人公。マーシャルは、帯広の「ばんえい競馬」とその関連牧場で働いているフィリピン人。日本へ不法滞在して、30年という。ある日、入国管理局に捕まり強制送還されてしまう。弟のもとを訪れるも、家族に不義理を働いてきた彼には、どこも居心地が悪いものだった。そんなマーシャルが向かったのは、馴染みの競馬場だった。マーシャルは、30年間も日本にいたので、故郷に帰ってもつい「arigato、arigato」と言ってしまうのが切ない。少ないダイアログだが、マーシャルの瞳から様々な思いが伺える。大雪の帯広と熱帯のフィリピンを舞台にマーシャルと、彼にとって切っても切れない馬を描く。実は、この映画には、東京国際映画祭、とくにアジアの未来のファンの方にはおなじみの面々も好演されている。エンドクレジットと共にメイキングも紹介されるので、ぜひご覧ください。
◆「鳩 (Pigeon)」日本 行定勲監督作品
晩年を海外で過ごしたいという日本人のロングステイ先として9年連続人気No1のマレーシアだが、主人公の道三郎(津川雅彦さん)は、息子(永瀬正敏さん)の妻が介護にお手上げとなったため、ペナンのロングステイハウスにマレーシア人のメイドに介護してもらいながら、一人滞在させられている。道三郎は、メイド達には「おじいちゃん〜」と呼ばれている。もう息子のことはわからないらしい。メイド役には、ヤスミン・アフマド監督映画「細い目」や「ムアラフ〜改心〜」で主演のシャリファ・アマニさん。日本に縁の深いアマニさんは、2015年のマレーシア映画ウィークでも来日、日本の新たなファンの輪がどんどん広がっている。このあと、11月のフェステイバルトーキョーの舞台「NADIRAH」にも来日予定。(後日、記事でご紹介します。)今や、日本で最も有名なマレーシア人女優と言っても過言ではないでしょう。
アマニさん、片言ながら、日本語のセリフがとても上手。役名はヤスミンというヤスミン映画ファンには嬉しい設定。また、ヤスミンが、劇中で小さくガッツポーズするシーンがあったが、これ「ムアラフ」でバイクのスターターを何度も踏んで、ようやくエンジンがかかったシーンでもやっていたな〜などと思いつつ、メイド仲間の名前が同じくムアラフの妹の名前と同じロハナだった・・なんてオタク情報で、すいません。「鳩 (Pigeon)」については、アマニさんの役名決定の逸話や、行定勲監督にインタビューした記事があるので、ぜひご覧ください。
◆「Beyomd The Bridge」カンボジアのソト・クォーリーカー監督
カンボジアは、プノンペンに「日本橋」と呼ばれる橋がある。1970年代、クメール・ルージュ(ポルポト派)との内戦で破壊されていた。1992年、日本政府はこの橋の再建を実施することを決めた。2年間、この橋の修復に携わった日本人、福田(加藤雅也さん)が主人公。橋の再建が終わり、最後にカンボジア人女性ソタリーを食事に誘うが、彼の心がどこか別のところにあるのをソタリーは気づいていた。福田には、1970年の当時、結婚を約束した女性、ミリアがいたが、内戦に巻き込まれることを恐れた日本人はカンボジアからの完全撤退を余儀なくされた。福田は、ミリアと結婚するため、日本に連れて行きたいと思っていたが、ミリアの母親を置いてはいけない。母親を迎えに行ったミリアをギリギリまで待っていたが、戦況は悪化し、会えないままやむなく帰国してしまったという過去があったのだ。ミリア役にカボンジアを代表する舞踏家、チュムヴァン・ソダチヴィーさん。ソタリー役には、ソト・クォーリーカー監督本人が演じている。加藤雅也さんは、70年代の若々しい長髪青年から、20年後の白髪のミドル役までを演じ分けている。
予告編
Write by Rie Takatsuka