The Kelabit Highlands in Borneo
ボルネオ島北東部のクラビット高原はバラム川の源流域で、バラム川河口にある都市ミリからプロペラ機(ツイン・オッター)で約1時間。カリマンタン側のインドネシアとの国境に近い内陸部です。標高1000mを超え、世界的に珍しい動植物が生息する高地熱帯雨林。そのため日中は気温が26度ほどでも、朝夕は10度前後まで気温が下がります。
ここは、陸稲栽培、狩猟、採集を生業としてきた先住民族「クラビット」の故郷です。クラビットの人々がつくる、良質なバリオの塩「バリオソルト」。高原の塩泉から採取した塩水を平釜で煮詰め、結晶化した塩を竹筒に詰めて炭火で焼く、伝統的な製塩法で作られる希少な山の塩です。塩味は控えめでまろやか。そしてミネラルが豊富な塩は、古くから大切な交易品であり、現在も特産品として有名です。
東南アジアで最高級とも言われる米「バリオライス」やパイナップルをはじめ、多様な農産物の生産地であるこの地。山々に囲まれた水田の稲穂が風に揺れる様子は美しく、雲に抱かれた緑の丘は、まさにボルネオの桃源郷です。
村人同士でも、外部からの訪問者でも温かく迎え入れてくれる「千の握手の土地」と表現されるクラビットの人々。現地を訪れ、ともに美しい景色を眺めることができる日を夢見ています。
写真提供/ Sarawak Tourism Board
文/上原亜季 Aki Uehara